短編

□トカゲと教授
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やっと本日最後の授業が終わり、スネイプは溜め息をついた。
授業の出来が悪く失敗する生徒が続出したのだ。
これしきの事で実に情けないものだ。

スネイプは教室を見渡した。
そこら中片付ける物が山済みだ。
さてどこから片付けるかと杖をあげると、視界にふと少女が入った。

「Ms.ミョウジそんなところに突っ立って何をしているのかね?」

不機嫌さ丸出しのお得意猫なで声でスネイプは質問した。

「あのー、忙しい中大変申し訳ないんですが、授業で分からない点があったので教えていただけないかなーと思って…」
「珍しく勉強熱心なのはいいが、我輩は忙しいのだ。さっさと出て行きたまえ」

スネイプの嫌味に動揺することもなく「ですよねー」とつぶやきしばらく部屋を見回す。
すると、何か思いついたのかナマエの顔色が明るくなった。

スネイプは胸騒ぎがした。


「先生、私が部屋の片付けをします。その間に先生は今日の採点を終わらせてください。そしたら教えていただけますよね!」

先ほどの胸騒ぎに対して思っていたより悪くない条件だ。
それならこの山積みの問題を夕食までに余裕で片づけられるかもしれないとスネイプは承諾した。
対して、ナマエは「よしっ」とガッツポーズをしさっそく仕事に取りかかろうと散らかっている机に向かう。

「くれぐれも我輩に手間をかけさせることのないように。今日に実験の二の舞にならないことを祈ろう」

ナマエはスネイプの言葉を軽く流し雑巾を手に作業を開始した、と思った途端叫び声をあげた。
言った傍から何事だ、とスネイプが叫び声に振り向くとナマエの姿がない。

だが、よく見るとナマエが居たはずの場所に小さな生き物がいた。

「馬鹿者っ!さっき忠告したばかりではないか!」

そう言いつつも鍋を取り出し調合を始める。
何やらぶつぶつ愚痴を言いながら鍋と向かい合っているスネイプを見かねた“トカゲ”は慣れない視界と爬虫類特有の歩行に苦戦しながら黒い影に近づき肩に乗る。

スネイプは内心驚きながらも調合を続けた。


***


「…できたぞ」

鍋をかき混ぜていた手が止まり、肩に手を差し出す。
そのまま空いている机の上に移動させ完成した液体をトカゲに数滴垂らすと、トカゲはみるみる本来の姿に戻っていく。

自分の身体が元の姿に戻ったと確認したナマエはスネイプの顔を見るなり抱きついた。

「なっ、なにをする!はなさんか!」
「助けてくれてありがとうございました!一生爬虫類暮らしかと思いましたよ」

さっきよりも余計に抱きつく力が強くなって放す様子のないナマエを無理やり剥がし取りながらスネイプは言い放った。

「罰則だ。面倒をかけた罰で今夜は完璧に調合ができるようになるまで返さんぞ」
「はい」

ナマエは涙目を隠すように満面の笑みで答えた。

今日の夜は長そうだ、とスネイプは大きなため息をついた。
しかし、満面の笑みに隠されたこれまでの策略をスネイプは知る由もなかった。


──罰ゲーム、スネイプに抱きつく

「爬虫類になり、罰則まで食らって…これで満足?」
「傑作過ぎだぜ」
「さすが我らが姫!」


fin.

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