短編

□恋は思案の外
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任務が無事に終わり、清々しい気分で一息付こうとフォッグズヘッドへ向かっている途中、

「ナマエちゃーん!」
「着いてくんな!」

一安心したのもつかの間、ストーカーに付きまとわれる。

これで何度目だ。
先日も厳しく警告したばっかりなのにこの男は全然懲りていないらしい。

「あんたさ、仕事は?グレイバック達はどうしたのよ」

スカビオールはキョロキョロと周りを見渡す。

「あ…はぐれた」

嘘つけぇい。

姿現しでここまで着いてきた癖に。
しかも、着地場所を見破られ地味に恐怖感に駆られる。

ナマエが一歩踏み出せばスカビオールも一歩踏み出し、ナマエが足を止めれば、スカビオールも止まる。
店の中まで付いて来られたら困ると、扉の前で立ち止まり杖を取り出して振り返る。

「私が手を出す前に立ち去りな!そして、出来れば目の届かないずっと遠くに逝って欲しいんだけど」
「そんな脅しで俺が諦めるとでも?本心じゃねぇのはお見通しだぜ」

どこまで馬鹿なんだ。
イライラと呆れがハーフハーフの顔をしているナマエをさておき、そんな顔をさせている張本人は呑気に「ナマエと温かい紅茶が飲みたいなぁ」などと呟いている。
確かに、雪がちらちらと降り始め、外は冷えてきた。

「じゃあいいわ。ただし、飲み終わったら一生近づかないで」

ナマエがため息をつきながら言うと、スカビオールは満面の笑みを浮かべて頷いた。


店に入ると中は既に死喰い人達であふれていた。
二人は空いていた席に腰掛ける。

「何であたしに着きまとうわけ?死喰い人の女が良いなら既婚者を除いてでも他にいるじゃない」

湯気の出ている紅茶を冷ましながらゆっくり飲むスカビオールに、疑問を問いかける。

「うーん、一目惚れってぇやつ?ナマエちゃん、完璧だし」

ナマエの美点を淡々と述べて行くスカビオールを目を見開いて見つめた。

「俺はどぉよ?こんなイケメン滅多にいねぇぜ」
「中の下」
「さすが!辛口だねぇ。ま、そんなナマエちゃん、好きだけど」

思ったことを正直に述べるナマエに全く怯まない。

「ファッションセンス“は”悪くないと思うわよ…」

「悪くない」という言葉に感銘を受けたらしいスカビオールは、強調された“は”を気にする素振りを見せずに、笑顔でお気に入りのスカーフの話をしだした。
そんな彼の話を笑みを浮かべながら聞いた。

思っていたより良いやつかもしれない。


会話も弾み、丁度良い時間になり店を出ようと会計をする。

「あ、金ねぇ。ナマエちゃんおごっ」

流石に手がでてしまった。

「賞金はどうした!賞金は!」

仕方なく彼の分も払いながら、さっきの気持ちは間違いだったと、自分の口元が上がっているのには気付く訳なく思ったのだった。


fin.

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