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□理想の先生
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※ヒロアカ×魔法学校
※個人的な偏見注意
300を超える入試倍率の雄英高校ヒーロー科に幸運にも合格し、夢の晴れ舞台へ通うことになった私。
だが私のクラス1-Aは入学早々金髪ツンツン君と真面目そうなメガネ君が言い争っていた。
「こんな中でやっていけるかな…」
そう不安に駆られていた私だったが黄色い寝袋から出てきた人物を見た瞬間にそんな不安も吹っ飛んだ。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
「こ…これは……」
陰険、根暗、黒髪セミロング、細長い、黒い、教職員、黒い……
プロヒーローのイレイザーヘッドとして活動しているそうだがアングラヒーローという事もあり当時の疎い私には知るよし無く、脳内にはある男が過った。
──「こうして、その時私の卒業までの目標が決まったのだ」
「訳が分からん」
皆の帰った教室、教壇に立って熱弁するユウに対して相澤は椅子に座らされ意味不明な説明を頬付を付いて聞いていた。
高校生活も残りわずかという所でクラスで上位を争うほど真面目な生徒だと思っていたユウの見てはいけない一面を見てしまったと相澤は話を聞いてしまったことを後悔した。
「育ち過ぎたコウモリ…です!」
「どうしてそれがこれと結びつく」
自身の目の前にある、ユウに無理やり押しやられた黒い布を見てため息混じりに言った。
「なんで分からないんですか!相澤先生の家にテレビあるんですか!?金曜日によくやってるでしょ?」
「馬鹿にしてるのか?」
「痛いッ!痛いッ!い、痛いですって!」
相澤の首元の捕縛具で締め付けられて身体中に痛みが走る。
だが、ユウはそれから開放されると両手を合わせて縋るように相澤の元に駆け寄った。
「お願いします!一度で良いので着てみて下さい!」
「断る」
「私が3年というながぁーい時と少ししか貰えない貴重なお小遣いをつぎ込んだ大傑作なのに!お願いします!」
「執拗い…!時間は有限、いい加減にしないと除籍処分にするぞ」
諦めの悪いユウに痺れを切らした相澤は“除籍”というフレーズを出す。
案の定、その言葉にユウの動きがぴたっと止まった。
流石に諦めただろうと相澤はふんっと鼻を鳴らし席を立った。
が、その考えは甘かったようだ。
「それ!やっぱり相澤先生には素質があるみたいです!無理にとは言いませんが着てください!」
「それ頼む態度じゃないだろ。言葉と行動違うぞ」
頼み込んでいるはずのユウは頬を赤く染め息を荒げて興奮から相澤の胸ぐらを掴んでいる。
この先一向に引く気が無いと分かった相澤は、必死さが伝わったのか、この状態が面倒臭いと感じたのか分からないが(おそらく、いや完全に後者だが前者だと信じることにした)「廊下で待ってろ」とユウに言い渡し着てくれることとなった。
数分後……。
「うわあぁぁぁ!」
合図があり教室に入ると待ち受けていたのはあのユウの大好きな映画の教授だった。
余りにも大声でユウが叫んだため相澤は肩を上げる。
「やっぱり似合わな「とっても似合ってますっ!素敵ですっ!」
相澤を見つめる目はキラキラと輝いている。
慌てて制服のポケットから携帯を取り出し、様々な角度から写真を撮る。
しっかり撮れているのか心配になるほど連写音が鳴り止まない。
「ふふふっ、これ待ち受けにしますね!相澤先生、格好良いです」
液晶画面を見ながらにやにやと顔をほころばせている。
対して相澤は頭を抱えてはいるものの“格好良い”というフレーズに満更でもない様子だ。
▼相澤に“褒め言葉”という呪文は効果抜群なようだ。
「さようって言ってください」
「……さよう」
「ありがとうございます!素敵です!次はマント翻して見てください!じゃあ次は次は───」
興奮気味の生徒とユウを落ち着かせる為の作がいつの間にかまんまと罠にはまってしまったコスプレをした教員の奇妙な撮影会はそれからしばらく続いた。
後日この噂が広まり、生徒や教員達にからかわれ、しばらくあだ名として呼ばれるようになった事は言うまでもない。
「先生!これからはあの格好で授業して下さい!個人的には理科の実験の時とか希望します、はい!」
「いい加減にしろ!成績10点減点するぞ!」
「先生……わざわざ映画見てくださったんですね…」
fin.