book

□嫉妬
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「よう!ユウ」

目の前からやってくるユウに右手を上げて挨拶した。
こちらに気づいたユウも手を振る。

「今日も元気ね」

それはこっちのセリフだ。
毎日お前の笑顔を見て元気貰ってんだよ、そう彼女の穏やかな笑顔を見て思う。

俺はそんなユウが好きだ。

「安全点検2回とも済ませといたからね」
「おう、サンキュー!お、そういや───」
「あ、スコット先輩!」

発した言葉は通り掛けたスコットを見かけたユウによって遮られた。


俺が何故好意を寄せる相手に告白しないのか、

「先日はありがとうございました 」
「ああ、喜んでくれたのなら良かった」

そう、それはユウがスコットのことを慕っているのを知っているから。


「先日ぅ!?何があったんだよ?」

再び二人になり、内心の焦りを表面に出さない様にわざとニヤニヤしながら尋ねた。

「帰りが一緒だった時に夕飯を奢ってもらったのよ」
「ふーん」
「なにー?聞いといてその反応」
「べーつにー、ただお前ってスコットに妙に懐いてるなぁって思っただけ」
「そう?教育担当して貰った先輩だからじゃない?」
「俺だって一応“人生の”先輩だろ?」
「何それ、ただの同期じゃない!それに、トラブルメーカーの問題児は尊敬出来ませーん」
「おい!」

「子供みたい」とユウがケタケタ笑った。

こういう所を直さなければと分かっている。
分かってはいるんだが……。

スコットとだったらどんな会話するんだよ…。

「なに?妬いてるの?」
「妬いてる…のかも、な」
「………え?」

考え込んでいたせいでつい口が滑ってしまった。
こんな事で嫉妬するなんて小さい男だと思っただろうか。

ええい、この際だ。

「ユウ、お前が好きだ」

でも入社した時から好きだったんだ。
ずっとずっと……。

なんて目を大きく見開いているユウに向かって口に出来る勇気はなかった。


───Your answer is……?


fin.
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