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□誰のもの?
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ここ最近ヴァリアー幹部たちはソワソワしている。
「う゛お゛ぉい、ルッスーリア!例の相手分かったかぁ?」
「だめよ、いくら聞いても教えてくれないんだもの」
それもこれも……。
ユウが夜なべをしてまで編んでいる手袋とマフラーのせい!
「もしかしたらあたしに渡すために内緒にしているのかしら」
「「「「それはない!!」」」」
四人揃って意気のあった反応をした。
ある意味気持ち悪い。
「絶対王子宛だね」
「ム、どうしてそう思うんだい?」
「昨日聞いたからさ」
部屋に動揺が走る。
ベルはそれを楽しむようにゆっくりと口を開いた。
「昨日の夜、ユウに誰に渡すのか聞いたら“セクシー”な人だってさ。ししっ、完璧王子宛じゃね」
「なぬっ、信用ならん…」
「言っとくけどお前は100%ありえねぇかんな」
「なっ!」
ベルの言葉を素直に受け止めレヴィは床にうな垂れる。
「それなら俺も聞いたぜぇ。“男前”な奴だとよぉ」
「僕も“かわいい”子だって聞いたよ」
皆はこれではらちが明かないと困り果てる。
相変わらず床に伏せているレヴィはもはや空気状態。
ガチャッ
すると扉が開き話題の張本人がやって来た。
「みんなどうしたの?そんな難しい顔して」
何も知らないユウは皆の顔を見てクスクスと笑う。
そんなユウに目を向けた五人の視線が両手に注がれる。
「う゛お゛ぉい…その手袋……」
スクアーロは呆然とユウの両手にはめられた赤い手袋を見つめて言った。
スクアーロだけではない部屋のみんなが同じ表情をしている。
「あ、これ?」
そんな皆とは正反対のニコニコ顔でユウは手袋を見せる。
手袋の動きと一緒に皆の目も動く。
「やっと完成したんだ。良くできたでしょ」
「一つ聞いていいかい?」
「ん?」
マーモンは皆が同じに一番気になっているであろうことを聞くべく先陣を切って口を開いた。
「その手袋は誰宛だい?」
皆は唾を飲み込んだ。
部屋に妙な緊張感が走る。
「もちろん、私!」
じゃあ、
セクシーで
男前で
かわいいって…
ユウのこと!?
一気に緊張感が切れ、皆の体の力が抜ける。
嬉しいのやら悲しいのやら複雑な心境である。
ガチャッ
皆して脱力し床に腰を下ろしているとまた扉が開いた。
「ユウ、行くぞ」
「「「「「なっ!」」」」」
扉から現れた人物の両手と首元を見て皆は驚愕した。
ボスが赤いマフラーとユウとお揃いの手袋を身に着けているではないか。
その上巻いているマフラーをユウの首にも巻きつけるというイチャつきっぷりを目の前で見せられ開いた口が塞がらない。
「苦しいよー」
「我慢しろ」
「じゃ、みんな後でね」
そう言ってユウは繋がった赤い糸ならぬ赤いマフラーを皆の目に焼き付けるだけ焼き付け、ザンザスに肩を抱かれて出て行った。
残された皆は思った。
“セクシー”と“男前”はまだ分かる。
でも……
“かわいい”かぁ!?
fin.