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□My father is…
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登校して来た生徒達が互いに挨拶を交わす穏やかな朝。

そんな朝の風景、生徒達の輪の中心で微笑んでいる少女。

そんな彼女、ユウはクラスのアイドル的存在だ。
気さくな性格と誰にでも手を差し伸べる優しさ、そしてちょっぴりアホ…いや天然なところが皆からの人気の理由なのだろう。

「今朝のニュース見た!?オールマイトがさ―――」

ユウが登校早々真後ろで始めた緑谷の話を笑いながら聞いていると突如会話の変化球が飛んできた。

「そう言えば、相澤さ、あっ……ユウさんって放課後は残って相澤先生と一緒に居るみたいだけど自主練…?とかしてるの?」
「自主練?そんなのしてないよー、相澤先生とはただ帰りが一緒なだけだよ」
「かかか帰り一緒に帰ってるの!?あの相澤先生と!!?」

目の前の緑谷くんは声が裏返るほど驚いた顔をしている。
私、何か変な事言ったかな。

「なんだなんだ?」

余りにも緑谷くんの驚き声が大きかったため皆の視線が私に注がれる。
そんなに驚くことかな、こんなに見られると何だか照れちゃうよ。

「ユウさんって相澤先生と下校してるらしい……」
「げ!まじかよ!」
「事実だったら大スクープね」
「カップルかって!」

カッカップルぅ…!?
私だってお年頃、流石にカップルは…気持ち悪い。

そこでユウはようやくはっ、と事の重大さに気付いた。
発しようとしていた言葉を飲み込み改めて口を開く。

「あ、相澤先生とは家が近所なだけだし一緒に帰るのもたまにだよ!たまに!…ホ、ホントダヨ!」

あたふたするユウに対して皆はスクープの誤報に「ふーん」とどこかつまらな気だがなんとか流してくれた。
だが安心したのもつかの間新たな難問が立ち塞がった。


「そうだユウ、今度お前んち行っていいか?」
「それならば私もぜひお邪魔したいですわ!」
「お、いいじゃんか!皆で行こうぜ!」
「え、えぇぇ!?」


ちょっと待って…!
何故この流れになったの!?
冷や汗が流れる。


だって私のパパは……

1−A担任のイレイザーヘッドこと相澤消太。

私自身も憧れのパパと同じ学校に入学して、まさか担任になるとは思ってなかった。
職場ということは知っていたけど……。
大人の事情というやつだろうか学校やパパからは親子関係を明かさないことと口が酸っぱくなるほど言われている。

でも私………


「やっぱ迷惑か…?」

返事を待っていた上鳴だが返答が無いので顔を覗き込む。

「っておい、お前顔色真っ青だぞ」


嘘付くの下手なんだよね ………。

「だだだ大丈夫だよ」
「「「嘘つけぇい!」」」

噛み具合が尋常でないユウに皆して息ぴったりに突っ込む。

「大丈夫だって!ほ、ほら元気百倍!」

力こぶを作ってみせるが真っ青な顔で見せる笑顔は引きつっている。
バレてはならないという念を押されたプレッシャーが重圧となって毎度のことながら伸し掛る。

「ほら、授業始めるぞ」
「相澤先生!」
「どうした」

ちょうど教室に入ってきた相澤は前列の席に群がる一角に向けて問いかけた。

「先生、ユウさんが体調悪いみたいなんですの」
「……気持ち悪い」
「俺が保健室に連れてきます」
「いやここはクラス委員長が保健室に連れて行くのが懸命かと」

付き添い役に我が我がと名をあげる。
だがそんな生徒達を相澤は軽く制し、青い顔をしているユウに向けて背中を差し出した。

「俺が連れていく。ほら、乗れ」

ユウは頷いて素直に背中に乗りおぶられる形で保健室へと向かった。

そんな背後が教室を出ていったのを見送ると上鳴が口を開いた。

「相澤先生とユウって実は親子だったりして」

真剣な顔で何を言うかと思ったらそんなことを言う上鳴の肩を切島が叩く。

「まさか!あの根暗そうな先生と太陽の様なユウとじゃ似ても似つかないさ」
「そうだよー」
「言えてる」

皆はうんうんと深く頷き笑った。





「大丈夫か?」
「んー…吐きそう……」
「おい、俺の服に吐くなよ…」

おんぶなんて何年ぶりだろう。
そして何故かとても落ち着く。

背中に寄り添うと自身と同じ洗剤の香りに包まれた。


平常心に戻った子に対して父親はユウをベッドに寝かせた後も気が気じゃなく数回振り返る。
そんな姿を見たリカバリーガールに「親馬鹿だねぇ」と呆れられたのだった。


fin.
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相澤先生におんぶされ隊…

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