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□飴と鞭
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※裏注意
※18歳以下の方は閲覧を御遠慮下さい



「みんな船長の命令よ!風上に向かって進路を!」
「「「アイアイ!!!」」」

この船の船長、キャプテン・バルボッサの命を受け、一等航海士は甲板に向けて声を発する。それを聞いた乗組員達は甲板を忙しなく行き来し始める。階段を降り終えると指示を出しながらその自身もそれらに混ざるように手を動かした。

「ユウ」
「はい?船長」
「今夜俺の元へ来い」
「……はい、船長」

通り過ぎ様呼び止められ耳打ちされた言葉にぞわりとつま先から頭の先まで総毛立つ感覚。何度聴いても慣れないフレーズに肩が飛び跳ねてしまい、それを愉快そうに鼻で笑われる。全く情けない事だ。我に返り、慌ててその過ぎ去った方を見たが、船長が何を考えているのかは黒い帽子にコートを靡かせる大きな背中からは想像できなかった。

「なんだ?浮かない顔だな」
「…そう見える?ビル」

私の視線の先を目で追い、隣で顔を覗き込むのはビル・ターナー。

「あー。あの船長、強欲な上に人使い荒いからなぁ、奴とは思考が合わないぜ。俺で良ければ何時でも相談に乗るぞ」
「一応、礼は言っておくわ。でも心配ご無用。あと次、キャプテンを侮辱する言葉を吐いたら……どうなるか分かるわよね?」
「怖い怖い、ユウがバルボッサを崇拝してるのを忘れてたぜ」
「さあ、持ち場に戻りなさい」

顔を寄せて向けられた笑顔にビルは両手を挙げ「はいはい」と言って自分の仕事に戻った。
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