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□How to make a “delicious” sandwich
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「ふぅ、やっと終わった…」
「今日のはなかなかに面倒だったな」

各々出された宿題を終え、監督生はノートを閉じ、テーブルを挟んだ目の前ではエースが伸びをする。

「お前達は呑気にゲームをしてたからだろ」
「そういうデュースくんに勉強を教えてあげたのは誰かな?」
「そうだぜ、デュースくんに教えるのは一苦労。もう大変で大変で」
「それは……否定できないが、そこまで言わなくても…」

先程まで睨み合っていた自分の勉強机に向かってデュースは「努力はしてるんだが…」ともごもごと呟いた。

「てか、もう23時じゃん!寮に帰らないと…!」
「もう遅いし、泊まってけばー?」

何気ない会話のように発したエースの言葉にデュースはぎょっとした。自身の願望からの聞き間違いか、と思ったが監督生の表情を見るにそうでは無いらしい。

「でもグリムが待ってるし…」
「グリムならもう勝手に寝てるって」
「うっ、想像できる…」
「うちの学校ガラ悪い奴らもいるし、こんな時間に女の子一人で出歩くと危ないぜ?今から送ってくのも面倒だしぃ?」
「確かに…それも一理あるな。教師と一部の生徒以外には気づかれていないとは言え、ただでさえうちの学園で紅一点な訳だし」

己の良心の答えはどうであれ、この機会に乗っからない手は無いとデュースも加勢する。2対1で卑怯だと言われても、理由に監督生の一番の弱点を上げてでも、この戦いは負けられないのだ。

「でも、突然お世話になっちゃうの悪いでしょ?」
「全然!なあ、エース?」
「ああ、問題なーし!」
「でもでも、パジャマとか持って来てないし──」
「「俺(僕)の貸すよ!!」」

二人は顔を背け、互いに咳払いをした。

「じゃあ…そこまで言ってくれるなら、お邪魔しようかな」

その返答に二人は任務を見事に遂行し「よしっ」とついハイタッチしようとしてしまった手を慌てて下ろし、各々テーブルや机に散らばった荷物の片付けに専念した。



「デュース、おっさきー。戻りましたよっと──」

シャワールームからエースが戻ると、一番風呂を譲ってもらった監督生は既にすやすやと寝息を立てて眠りについていた。

「おいおい、パジャマ譲ったのにそれはないだろー」

それもデュースのベッドでデュースのパジャマを着て。心做しか瞼を閉じて長い睫毛が一層目立つ寝顔は幸せそうに見える。

「しぃー、彼女が起きるだろ」

同じベッドの端に座り、未だ少し濡れている髪を掬いながらドヤっている余裕な態度が腹立つ。マウントをとるな。

「ん、エース。なんかつけたか?」
「うるせぇっ」

外行き用の香水に、普段よりもボタンを開け着崩した容姿。それを見て心中を察し、にやにやしてるのが余計に腹立つ。

「早く風呂行ってこいよ!」
「嫌だ!風呂行ってる間に自分のベッドに連れてくだろ」
「ぶっぶー!残念でしたぁ!このままデュースくんのベッドでふ、た、り、で寝ます。動かしたら起こしちゃうでしょーが」

そう宣言すると、エースは監督生のいる布団の中に入った。

「は?ざけんなっ!」
「相変わらずの柄の悪さ。おー怖…」

凄い目付きで拳を合わせる目の前の元ヤンに両手を上げて降参のポーズを取ってみせる。

「はぁ、いいから早く風呂行ってこいよ」
「お前は目を離した隙に彼女に手出しかねないだろ」
「合意無しに睡姦は流石にしないって」
「睡かっ…!絶対に絶対に誓うな?」
「どんだけ俺の信用ないわけ」


翌朝、監督生が目を覚ましてベーコンやレタスの気持ちを代弁出来るであろうほどにぎゅうぎゅうになりながらエースとデュースに挟まれて寝ている現状に困惑したのは言うまでもない。


fin.

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