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□Chasse à la Cerise
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鏡に映った目の前の女性は胸元の開いた淡いグリーンレースのタイトなスリットドレスに身を包み、唇を薔薇のように真っ赤に染める。
ライトに反射して光るのは欲に溺れたアクアマリンの瞳。見つめられた男は誰もが虜になる、そんな瞳で今日もハートを奪い取るのだ。


休憩室での空き時間。
いつもの様にローズの周りには同じ歌番組の男性芸能人やアーティストの囲があった。
話に同調して周囲の男達に寄り添い、クロスした自身の肌蹴た太腿に手を重ね持ってくれば、桃色のハートはみるみる濃い紫や紅に変わる。

「ねえローズさん、今日この後空いてる?」
「僕も!良かったら───」
「俺さ、行き付けの高級ホテルレストランで顔が利くんだけど………あ、ロビンさん!」

先程まで話していた顔の整った彼はどうやらロビンの知り合いらしい。彼らの挨拶を遠目で眺めつつもやはり目が行くのは取り巻く女達。

「……それは意図的にか」
「何のこと?」
「いや、何でもない」

余所見していたローズは突然ふって来たカーブボールに内心驚きながらもあたかもお前は目じゃないと言った様に冷静に返事をする。対してローズの身なりそして太腿に置かれた掌へと目線を流した彼は「邪魔したな」と吐き捨てる様に言うと隣に専属らしき女性スタッフ達を引き連れその場を去っていった。

「なんだ、あいつ…」
「少し有名だからって…」
「やっぱお高くとまってますよね」
「でさ…!」
「どう?今夜───」

同い年の元生徒でも彼女達…ショコラやバニラよりも純粋な乙女で無いのは自覚している。

「あれ?」
「俺、何してたんだっけ…」
「…やばい!出番だ!」

眉根を寄せたローズは紫髪の男の背中を目で追いながら集りのハートをピックアップした。

この想いが過激で刺激的な快楽に共に心中するゴールならばそれもそれでありだ。貴方を深く深く底へ堕とせるのなら。
秘めた紫色に淫らな嫉妬を貴方だけに特別魅せてあげる。だから……。

「私に堕ちて」


ヴィアンドの後のお楽しみ、デセールは大事に取っておかなくては。
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