short

□L'amour rend aveugle
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※リクエスト作品
※狂愛注意


「ん……」

隙間からぼんやりと差し込む光に瞼を開く。すると視界には黒一色の殺風景な部屋が広がっていた。

ここは何処だろう。
私はさっきまで何をしていたの。
確かショコラとバニラと……。

思い出そうとすると頭がズキズキと痛む。その上、身体の自由が利かない事に気付いた。

「な、なにこれ!?」

上方を見ると手首には茨が巻き付き、自身とベッドの柵を繋いでいるではないか。いったい誰が、などと思いはしたがそんな事今はどうでも良い。霧のかかりかけている脳でも分かる。
今すぐこの場から逃れなくては…!

ここは危険だ。
だが、手鎖はびくともしないどころか、もがけばもがくほど手首に食い込みチクチクと痛みが走った。

「抵抗すればするだけ貴女の体力が減る一方ですよ?」

突然聞こえてきた声に驚き、頭を上げそちらを見ると扉の傍に黒い服を身にまとった眼鏡の男が立っていた。

男は一歩一歩を噛み締めるように近付いてくる。

「だ、だ、誰!?」
「…やはりご存知ないのですね……」

ユウが必死に記憶を辿り、眉を寄せていると男はどこか悲しげに口を開いた。

「私は貴女を考えない時などなかったと言うのに……貴女と大半の時を共に過ごしていたと言うのに……ご存知ないのですね……。一昨日お姉さんと作ったシチューは美味しかったですか?」
「バニラと…。な、何故それを…!?」
「だから言ったでしょう?私は毎日貴女の事を想い、“見ていた”って」

怖い怖い怖い怖い怖い……。

脳内では既に赤い危険信号が激しく点滅している。

「そ、そのうち助けが…!」
「助け?そんなの来ませんよ、お友達や王国の連中は目の前のことで手一杯。その上、誰一人この地に踏み入れることの出来ないよう魔法をかけてありますから、ね」

ユウを見据える瞳は、それならば逃げられる訳もないだろうと言っていた。
まさに袋の鼠。

「もうすぐ魔界は、我らオグルのものになる。オグルの女王として我々と共に過ごす事も考えました。……でも耐えられなかった。ユウが、私以外の奴らに触れられるのが。…私のモノにしたかった……そう、私だけのモノに」
「…っ!」

ユウに触れたかと思うとジルウェットは太股に接吻をした。

「初めて貴女と出会った日からこの時をどれほど夢に見た事か……ユウ…」

耳元で囁かれ身動きの取れないユウは更にぞわりとなんとも言えない感覚に襲われた。

「や、ぁっ!触らないでぇっ!」

もどかしく上から下へと撫で回す腕にユウは耐えきれず蹴り飛ばした。

怖い、痛い、恥ずかしい、色々な想いが渦巻き、涙となり頬を伝う。

「随分と乱暴なお嬢様だ。まあ、時間はたっぷりありますし、ね」

ジルウェットは蹴られた箇所を擦りながらにやりと意地悪く微笑んだ。


普段の勝気なユウは何処へやら、これほどにも弱った姿を見せるとは。
初めて見るユウの面に興奮を必死に抑える。こんなにも事が上手く行き、明日は私に天罰でも降るでしょうか。

「洗練されたレディになるまで、私は待てますよ」

それまで、私好みの素敵な女性になるよう一から教えて差し上げましょう。
そして、いつしか私しか見れないように。

睡眠薬の副作用で意識が薄れて行くユウを寝かせまいとするかのように深い深い口付けをした。


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