short

□Toujours avec toi
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※リクエスト作品
※狂愛注意
※『L'amour rend aveugle』の続きです。


私がここに来たあの日から、もう何年経っただろうか。

いつもの様に家事全般を熟していると、ふとそんな事が頭をよぎった。
ユウは自身の姿を改めて見渡す。メイド服に身を包み、お皿を洗っている。
私は何をしているのだろう。

そう、私は誘拐されてここに来たのだ。
好意でここにいる訳では無い。
何度となく脱走を試みたがこの屋敷は迷路の様で、どこの通路を選んでも必ず同じ場所に戻ってくる。ジルウェットの言っていた通り、強力な魔法がかけられている様だ。

もしかしたら“永遠に”この屋敷から出られないのではないか。バニラにショコラ、ウーとソール、ロビン先生…そしてママ……もう一生皆には会えない。
そう考えるといつも堪えている涙は顔を出す。

だめだめ、泣いては。
きっと大丈夫、もっと前向きに考えないと。

「ユウ、少しこちらに来て下さい」

ユウは何だろうと不審に思いながらも大人しく呼ばれた方に行くと、そこには真っ白いドレスを腕にかけて待つタキシード姿のジルウェットがいた。
驚いているユウに対して、ジルウェットはどこか満足感のある口ぶりで話した。

「もっと早い予定だったのですが、遅くなってしまいましたね。ユウの為にドレスをオーダーメイドしたのですが、試しに着て見せてくれませんか?」

本心は“NO”と言っていても身体は勝手に頷いてしまう。
身体は素直だ。逃げようとした時や言うことを聞かなかった時に受けた“お仕置き”という名の罰を思い出し、瞬時に反応してしまう。

純白のドレスにティアラ……とても豪華で綺麗でウエディングドレスを着ることを夢見ていた私にとって嬉しいことなのに。何故だろう、この気持ち。

言葉では掲揚し難い不快な感情がぐるぐると渦巻く。

「とても似合っています。綺麗ですよ」

そう言い、左手の薬指にお揃いの高価そうなリングをはめる。するとユウの頬に大粒の雫が伝った。


あらあら、肩まで震わせて……。
そんなに嬉しいのですね。

「さて、挙式が楽しみですね……と言っても貴女と私、二人限りですけどね」

そう言って、嬉し涙を浮かべているユウに微笑みかけた。

可愛い可愛い私だけのユウ。
愛しているという言葉では足りないほど狂おしいほどに貴女を想っている事、貴女には伝わっているでしょうか。ユウの全てを壊してしまいたくなるほどに愛している事を。

もうあの日から6年という時が経ちました。
私好みの洗練された大人のレディになったことですし、もう良いですよね。
小さな芽は真っ赤な食べ頃のチェリーに……。

ずっとこれからも。
いつまでも共に同じ時を過ごしましょう。

ポロポロと雫が止めどなくこぼれ落ちるユウの肩をそっと抱き、涙の跡を舐め取った。

───Toujours avec toi


fin.

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