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□愛しき君へ
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※バレンタイン企画
※現パロ


もうすぐ春だというのに雪が積もった広場で待ち人を探す。

コートを羽織っているとはいえ、スーツ姿はやはり冷える。特に革靴は積もった雪からの冷えを容赦なく感じる。何気なく吐く息も白く、それが余計に寒さを感じさせる。
ストールに顔を埋めて待っているとコートのポケットに入れていたスマホが鳴った。

« ごめん!仕事が長引いちゃった…( ´>ω<)人
今から急いで行くから!!! »

彼女からの連絡に“今日は路面が滑りやすいから、気を付けてゆっくり来い”と返信すると!特にやることも無くなり彼女が来るのをじっと待つ。
そこにあるベンチに座っても良いのだが好一対の中に一人座るのは気が引ける。

「今日はバレンタインか……」

そう考えると、いつもよりこの広場もカップルが多い様に感じる。
今にも雪が降り出しそうな屋外にいて寒くないのだろうか。いや、寒いからこそ身を寄せ合い仲を深められ、そのことに意味があるのか。いや、でも───。

「よく分からん……」

考えているうちに頭が混乱し、一人呟いた。

恋仲というものは難しい。未だにそう思う。
彼女は自分の何処を好いてくれているのだろうか。自分は彼女から多くを貰いすぎているのではないだろうか。彼女のあの笑顔に幾度癒され励まされただろうか。

───「ねえ、あの人格好よくない?」
───「ほんとだ…スタイル良すぎ!」
───「彼女いるのかな?」
───「声かけてみようか」
───「えぇー恥ずかしいよぉー!」
───「外人さん?モデルかなぁ」
───「あの人ずっといるけど、彼女待ち?」

先程から周りがざわついている事なんか露知らず、対して自分は…などと思いながらすっかりぬるくなったコーヒーを口に運んだ。
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