touken
□神剣(捕獲)への道
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「行ってくるよ」
「気を付けてね。刀装はちゃんと身に着けた?投石兵は?」
「はいはい」
「ちょっとちゃんと聞いてる!?一刀でも中傷を負ったら──」
「即帰還!分かってるさ。もう毎回毎回、君は心配性だねぇ」
まるで子供を新学期に学校へ送り出す母子のやり取りのように第一部隊の隊長に問いただす。
「心配にもなるよ…!だって……本当は皆にお守り持たせたいくらいだけど……お金ないから」
「うちの本丸、資金もなければ資源も無いもんねぇ」
「そうね、特に玉鋼さん…ね」
うちは鍛刀し過ぎて資材枯渇状態が続いている。
程々資材や依頼札が溜まっては消え、溜まっては消え……気づいたら跡形もなく消えているのだ、仕方ないね。それもこれも何としてもお迎えしたい刀の為だ、仕方ないね。
「おい!主に向かって何て口を……」
第一部隊隊長兼近侍であるにっかり青江に現実を突き付けられ遠い目になっていると自称第一部隊副隊長が口を開いた。
「どうかこんな無礼な奴よりも是非近々…いや、今からでも俺を近侍にする事をお考え下さい!」
へし切長谷部は自身の主である審神者に向き直ると膝を下ろしどうか俺をと懇願する。「こいつなんかより最良の結果で、かつ何でもこなせます」と青江を横目で捉えながら言うと比較的本丸では穏やかな青江も流石に心外だとでも言うかのようにため息を吐いた。
「おい、そのため息はなんだ」
「何だろうねぇ……ハァ…」
「貴様ぁ」
完全に真面目な彼はからかわれてるなと思いながら言い合いを流していると輪の隅で静かに話を聞いていた刃物が突然手を挙げた。
「それでは俺も名乗りを上げようか」
なんだ、なんだ、言い合いのサイドでなにか始まったぞ。
当の発言者である、三日月宗近は「空気を読むというやつだ」などと申しており…。
「彼ら等より私をご指名下さい。何時でも癒して差し上げますよ」
次いで待ってましたとでも言うかのように小狐丸が撫でてくだされと言いたげに頭を差し出して来た。
「また始まってしまいましたか…」
太郎太刀はやれやれと頭を抱える。
「全く…ね」
言い方から日常茶飯事のことなのだろう、太郎太刀に対して大変申し訳ない気持ちになった。
基本的ににっかり青江、へし切長谷部、三日月宗近、小狐丸の位置は動かさないので第一部隊に配属される刀剣男士達には胃痛剤をあげたくなる。暫く前まで太郎太刀の位置は江雪左文字が居たのだがいつもいつも彼だけ赤疲労で帰ってくる為、ローテーションでの形をとることになったのだ。
和睦の付喪神さんには荷が重い仕事だったか…。
今一度配属を考えよう。
審神者は改めてそう思った。
「蛍ちゃんもごめんね、大変でしょう?」
「もう慣れたから平気だよ。それに皆が言い争ってる間に誉狙えるし」
流石誉泥棒…恐るべし……。
蛍丸をなでなでしていると小狐丸が反対の腕を取る。三日月も「はっはっはっ」って…笑ってる場合じゃないよ。
そんな事より同じ刀派だろ、早く石切丸を連れてきてくれ…!
「ええい!じゃあこうしよう、誉を一番多く取ってきた者を近侍とする……ということを考える!」
このままでは一向に拉致があかないと未来を読んだ審神者は、適当にあしらってさっさと出陣させる作戦に出た。案の定、皆(主に長谷部)の反応は良い様だ。
「その言葉、覚えていてくださいね!必ず!最良の結果を主に───ほらお前達は目を離すとどこか行くんだ、早く行くぞ!」
「あなや」
「これ!髪を引っ張るでない!」
長谷部はやる気に満ちた目を輝かせて、問題児と称する三日月と小狐丸を引っ張り持ち前の機動力で一番に出ていった。これだから長谷部はチョロいと言われているのだ。
扱いやすくて主大助かり!
「隊長は僕なんだけどなぁ」
「では行って参ります」
「いってきまーす」
「行ってらっしゃい、今日は地面もぬかるんでるから転ばない様に気を付けてね!」
既に門を出て見えない三振りとそれを急いで追おうともせずに遠のく青江、そして審神者は主に太郎太刀と蛍丸を見送った。