touken

□お揃い
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「君の方から僕の元へ来るなんて珍しいね」

それはふとした思いつきだった。
私室前で風に当たっていた彼の「何か用かい?」という言葉に私は首を横に振った。

「へぇ、僕と同じ髪型にしたのかい?」

何か気付かないかと問う前に青江はここを訪れた理由に気付き、いつもの様ににっかりと笑みを向ける。
不思議な雰囲気を醸し出している為か自分は本丸の中で浮いていると彼は自負しているが、私はそんな青江の笑顔を見ると何処と無く安心する。なんて当の本人には言えるはずもなく私は気づいて貰えたポニーテールに結った髪を触る。

「そんな所につっ立ってないで近くでちゃんと見せてよ。恥ずかしがらずにさ」

縁側に座っていた彼の隣に腰掛けると「どれどれ」と骨董品を鑑定でもするかのように見定める。
審神者になって以来、滅多に髪なんて触れられ無いため少し擽ったい。我慢したつもりなのだが多少の身を捩る反応に本丸内でも偵察値の高い彼は笑った。

ジャージ姿に同じ髪型。
少しは兄妹みたいに見えるだろうか。少しはなれているだろうか、未だに我が本丸に歓迎出来ていない彼の同派の代わりに。

「さあ、行こうか」
「ふぇ…?」
「こんなに素敵な姿は皆に見せないと勿体無いよ」
「え?」
「んふふ…」

未だ隣で正座している審神者に手を差し出し青江はほらと急かす。躊躇しながらも審神者は青江に言われるがまま着いて行った。

「……少しでも君のお気に入りだって感じて居たいんだ」

そう言った彼の寂しそうな顔。
他の子より飛び抜けて大人びているとは言え脇差である訳だし、兄弟のいる刀が多いこの本丸ではやはり“仲間”がいないのは寂しいのだろうか。本丸の中でも古株の方である彼はいつも近侍ではあるものの最近の私は仲間が次々と増え新入りの相手ばかりだったからだろうか。
もう少しにっかり青江自身を見てあげないとと審神者は反省した。

だがそう反省したのもつかの間。
皆の居た縁側で照れながら髪型を見せていると耳元で「羞恥プレイって知ってるかい?」とか囁いてきたので補足する間を与えずに真剣必殺、腹パンをかましました。


fin.



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