セブ誕 2014

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時折、意味もなく地下にある教室の前にきてしまう。
扉が開かなくて、それで、寮にいつも戻る。

なのに


『開いた…』



中にいたのは、ダンブルドアだった。
綺麗に片付けられていて、初めてきたはずの部屋なのに、酷く懐かしく寂しく感じた。

「エイミー・ウィーズリー。マクゴナガル先生が、最近の君の様子を嘆いておったよ。」

NEWTの結果は、今までの試験と特に変わることもなかったが、私はあまり嬉しいとは思わなかったのだ。
無表情で、感情が読み取れないとも言われた。


今なら完璧な閉心術ができるだろう。


『(…閉心術?)』


残りわずかしかないホグワーツの生活は味気ないはずなのに、終わって欲しくないと願う自分もいた。


袖先からちらりと見えたダンブルドアの指先は黒ずんでいて、何故か、もうすぐこの偉大な魔法使いが死んでしまうような、そんな気がした。


『すみません。あの…私の知り合いに、Sって人はいますか?…親しい人で。』

訳の分からない質問だけど、彼なら答えてくれる気がした。


「難しい質問じゃ、シリウス…は、あまり仲がよくないとみえる。」

ダンブルドアは部屋をぐるぐると回った。

「スネイプ先生も、名前の頭文字はSじゃ。」

『スネイプ先生が?』

私に何を謝ったのか。
でも研究室というのは、スネイプ先生ならば納得できる。

「…会った時に、聞いてみたらよかろう。」

ダンブルドアは、私の手のひらに、レモンキャンディーというお菓子を手渡した。


「話をすれば、来たようじゃ。」

ダンブルドアが杖を振り、私を突き飛ばした。

私は、部屋の陰の、目の前に立たないと見えないような死角の位置で、喋ることも動くことも、できなかった。


「お呼びですか?校長。」


部屋にスネイプ先生のバリトンが響いた。

「セブルス、いよいよじゃ。来週にはハリーと出かける予定でのぅ。」

まるで、散歩にでもいくかのような軽い口調でダンブルドアが言った途端
スネイプ先生が一歩踏み出したのが、空気の流れで分かった。

「どうしても、無理なのですか?我輩は…」「その話は既にしたはずじゃ、セブルス」

ダンブルドアの声は、
今まで聞いたことがないほど冷たいものだった。
いい加減、動けないままで、姿勢はつらいし、何故、私がこの会話を聞いていていいのかも、分からない。


「わしは、それよりも、あの子のことが心配でのぅ…」

「それは、もう、既に終わったことです。」

今度はスネイプ先生がダンブルドアの話を断ち切ろうとしたけれど、声が震えているのが分かった。


「解いてあげなさい。あの子はそれを望んではおらんよ…」

「しかし…」

「あの子が側にいることは、セブルス、お主の支えになるだけではなく、あの子も救われるのじゃ。」


スネイプ先生は何も返せなくて、
この会話はダンブルドアが勝った様子だった。


「多分、エイミーも、そう思うておるよ。」

私が自分の名前に驚く暇もなく魔法がとかれて、私は前に飛び出した。

そのまま倒れそうな私を、何故かスネイプ先生が駆け寄って、抱き留めた。


「…何故、…ウィーズリーが…」
「…セブルス、」

「…」


どこかで聞いたことがあるような魔法がかけられて、



『セブルス…』

すべての糸が繋がった。

「…エイミー、すまない。」



ダンブルドアが、部屋の扉をあけ、外に出ようとしていた。
これがきっと、最後の別れなのだろう。








「エイミー、…セブルスを、頼む」







何度も頷くことしかできなかった。
この、偉大な魔法使いがいなくなった後など、想像もできなくて、寒気がする



『…セブルスの、馬鹿。
セブが、殺人鬼でも何でも私は大好きなのにっ。』


埋め合わせ、してよ。って、セブを睨みあげた。



「あと数日のできる限りの時間を全て君に捧げよう。」





それに成るために生きるのか



歯車は止まらない。
彼は、裏切り者という枷によって十字架を背負った茨の道を、歩き始める。


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