妖変化

□的場家との因縁
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呪詛の事件の数日後、酒見家の周辺で不審な事件が立て続けに起こっていた。





それは、酒見家に許しをもらい、無害な妖たちが襲われているという事件だった。




「……影霧」




千景は影霧を自身の身体に憑りつかせると事件の所へ向かった。



『……気をつけろよ、主、影霧』



蓮池は呟くように二人を見送ると、屋敷の中に入っていった。



「あら、蓮池?あなたお仕事は?」



『我は奥方を守るという仕事があるので。一緒に二人が帰ってくるのを待ちましょう』



蓮池は呪詛の事件以来、できるだけ咲良の近くにいるよう千景に言い渡された。



第一発見者であり、女性型の蓮池が側にいる方が千景も安心するかもしれない、という千景の配慮の表れであった。



「そうなの。それじゃあ、一緒に待ちましょう」



『御意』



蓮池はその時、ピリッ、と首筋に何かが走るような感覚があった。



『っ……?』



振り向くが、何もない。



杞憂かもしれないが、嫌な予感が蓮池の中によぎった。



『……まさかな』



蓮池はそういうと咲良の後についていった。

















念のため、現場と少し離れたところで千景は影霧を『妖変化』の中に戻した。



千景たちが事件現場にたどり着いたときに、見覚えのある顔があった。




「……的場?」





人物はうっすらと笑うと、千景に声をかけた。






「やぁ、酒見じゃないか。こんなところでどうした?」






「それはこちらのセリフだ。何飄々と人の領域に入り込んで来てやがる」




千景は徐々に警戒を高めていった。



「そういえばそうだったな。ここはお前たちの領域だったな。だが……妖がいるなんて、酒見家も落ちぶれたものだな」




「俺たちの領地にいる妖たちはみんな無害だ!!それを勝手にやってきて調伏させるなんて……!!」




「どうしてそんなに妖に肩入れをする?こいつら全員、妖だ。人が肩入れするなんて……」




「昔の先祖が大妖に頼んで、右目をやらなかった奴の子孫が何を言うか」




千景は一番言ってはいけないことを言った。




『主……!!』




『こいつ馬鹿だろ……』




焦る影霧の声と呆れる雹霞の声が『妖変化』の中から聞こえたが、聞こえないふりをした。




「貴様も一緒に消してやる」



的場はそういうと式を呼びつけ、千景に攻撃を仕掛けさた。



「そうはいくか」



千景は煙幕を使い、視界が遮られた瞬間、『妖変化』で雹霞を憑りつかせ、影霧を具現化させた。



「……おいおい、いきなり妖二匹か……まぁ。いいか。酒見家を追放できるなら……」



的場は小声でそういうと式に攻撃をかけさせる。



雹霞と影霧も反撃を始めた。
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