妖変化

□的場家との因縁
8ページ/12ページ




蓮池が屋敷に着くと、千景が影霧の傷の止血を行っていた。




――これは……妖力がどんどん弱まっている……




蓮池はそう思った。




自分の妖力や、雹霞の妖力が強いとしても、影霧の妖力も『妖変化』の中では上位に入る。



その上位者が、こんなにも妖力が弱いだなんて、ありえない。



蓮池は『妖変化』の中から雹霞を出した。



『どうした、蓮池』



『雹霞、少し妖力を出せ。影霧の血を止める』



『心得た』



雹霞と蓮池は千景がいる反対側に回り、影霧の傷口に触れた。



『っ……』



『すまない、影霧。しばらくの間の辛抱だ』



蓮池はそういうと雹霞に合図を送り、妖力を操作し、影霧の傷口に妖力を送り込んだ。



瞬間、血が固まり始める。



「影霧!!」



血が止まり始まると、影霧はうっすらと目を開いた。


『ある……じ……』




「何もしゃべるな。傷はまだ完全に癒えていない」




影霧は目を動かし、蓮池と雹霞を視界にとらえた。



『はす……いけ、ひょう……か……すま……ない……』



蓮池はため息をつくと、少し微笑んだ。雹霞も同様だ。



『そんなことを言うのならな、さっさと治して主と奥方を守れ、馬鹿たれが』



『……あぁ、そう……だな』



影霧はそういうと、眠りに着いた。



「影霧!?」



『大丈夫だ。我と雹霞の妖力で生命力を保たせている。これで死んだら、こいつを恨む』



蓮池はそういい、血が止まったことを確認すると、布団をかけた。














『奥方、すまない。大丈夫だったか?』



蓮池はそのあと咲良の結界を解きに向かい、謝罪した。



「えぇ、大丈夫ですよ。それより、影霧は大丈夫なの……?すごい血だったけど……」



『今は血が止まり、眠っている。当分は目を覚まさないと思うが……』



「そう、残念ね……影霧の綺麗な目、暫くは見れないなんて」



咲良は寂しそうな顔をした。



『妖にとっては一瞬だとしても、人間にとっては長い時間だ……本当は、『妖変化』の中に戻した方が良いのだがな……』



蓮池は咲良の周りに張っていた結界を解くと、立ち上がった。



『奥方。主の許へいってやってくれ。我は少し調べなければならぬことがあるのでな』



咲良はすぐに了承してくれた。



千景の許へ咲良を連れて行くと、千景は影霧の手を握ったまま、眠っていた。



「あらあら……」



『奥方、すまん、頼んだ』



「えぇ、分かっています。蓮池も、気を付けてね」




『御意』



蓮池はそういうと咲良の前から姿を消し、漆黒の夜の中、走り出した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ