妖変化

□我の名を呼べ
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それからというもの、酒見が夏目に話しかけることはなかった。





日が経ち、日曜日になった。


「ニャンコ先生。蓮池って、どこに住んでいるんだ?」


「どうした夏目。なぜ蓮池にこだわる?」


「……特に理由はないんだけど、なんか、気になって」


ニャンコ先生は「ついてこい」。というと、夏目を山奥に案内させた。




「ニャンコ先生、どこまで行く気だ!?」


「案ずるな、そこの滝壺に用があるだけだ」


「滝壺?」


しばらくすると、滝の音が聞こえてきた。


「おーい、蓮池ー!」

ニャンコ先生が滝壺に向かって声を上げると、水の中から声がした。


『……誰だ』


「夏目です、蓮池、君に会いに来た」


『……夏目殿?』


水の中から現れたのは、この前名前を返した蓮池だった。


『何用か?呼んでくれれば、飛んで行ったのに』


「蓮池は……水龍なんだよな」

『左様。我は水龍の蓮池。それがどうした?』
「いや……。ただ、ちょっと気になって……」

『……用はそれだけか?ならば、我は戻――』


蓮池は言葉を途中で切った。そして、殺気をみなぎらせる。

「蓮池?」

『夏目殿、斑。水の中へ入れ。なに、大丈夫だ、そこらへんは浅い』

蓮池は夏目とニャンコ先生を自身が住む水の中へ入れさせた。ちょうど足首が浸かる程度の所である。

「ニャンコ先生、蓮池、どうしたんだ?」

「……わからん。ただ、温厚なはずのあやつが、あんなに殺気をみなぎらせるのは、相当なものだ」


瞬間、茂みから、的場の式が現れた。


「あれは、的場さんの式!?」

「蓮池!!」

『ええい、黙れ、我が追い払う!!』

蓮池はそういうと、妖力を使い、滝の水を操り、的場の式を蹴散らした。

『去れ、的場の式よ。我は貴様らの主の式になる気はさらさらないと言え』


的場の式はしばらく黙っていたが、ガサガサと茂みをかき分け、消えていった。
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