妖変化
□彼女との距離
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その日以来、夏目と瑠華は休日など、一緒に過ごすことが多くなった。
別に、これといってやることはないのだが、ただ一緒に過ごしているだけで、時間が過ぎていった。
今日は、氷帝・雹霞が思い入れがあるという小さな神社の社に腰を掛けていた。
「……酒見」
「……なぁに?」
「酒見は、妖に身体を貸しているんだよな。その……怖くないのか?貸している時」
「……最初は怖いけど、今はもう平気。夏目君には、そんな経験、ないと思うけど」
瑠華は『妖変化』を見ながら答えた。
「……そうか。怖く、ないのか」
夏目はそれだけ言うと、床に寝転がった。
「夏目君は、毎日のように妖に追いかけられてるね」
瑠華はクスリと笑って言った。
「っ、見てたのか!?」
慌てて起き上がる夏目。それをみてさらに瑠華はクスクスと笑った。
「体育の時とか。窓から見えるし。あの日以来、タキさんとも友達になれたし。全部、夏目君のおかげ。
ありがとう」
「……俺は別に、何もしてない。
酒見が一人で頑張ったんだ」
「……夏目君は、優しいね。普通の、人の子みたい。私もそういう風になりたかったな……」
ざぁっ……と、夏目と瑠華の間に風が通り抜けた。