妖変化
□君の手を取るとき
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花嫁衣装に着替えさせられた瑠華は、昨日名取に宛てて書いた際に出来た指先の傷を隠してた。
「浮かれない顔をしていますね、せっかくの晴れ舞台なのに」
的場は瑠華の顔を覗き込んだ。
「……晴れ舞台でもなんでもない。こんなの、ただの屈辱だ」
「酷い言われようですね。これは仕方ないのですよ、私の所の先代と、貴方の所の先代が勝手に決めたことなのだから。恨むのなら、自分たちの先代を恨むことですね」
的場はそういうと部屋から出て行った。
どうやら、式が始まるまで親族たちに挨拶をしてくるようだった。
「……蓮池、大丈夫だよね……?夏目君に『妖変化』を渡して、幸せに暮らしてるよね……?」
瑠華の一人声は、部屋に虚しく響いた。
『夏目殿、では、手筈通りに頼む。名取の若様は、我が合図したら会場で煙幕を』
「「わかった」」
『蓮池、我らは……』
『何を言うとる雹霞。我らは会場で騒ぎを起こすのみ。主は夏目殿に頼んでおる。夏目殿は信頼のできるお方だ』
蓮池は雹霞たちに簡単な説明を言いながら夏目とニャンコ先生の方を向いた。
『……夏目殿。斑。主を……瑠華を……頼む』
夏目たちはコクリと頷くと、屋敷の後ろの方に回っていった。
『では名取の若様……』
「あぁ。分かっているよ」
名取はそういうと煙幕を取り出した。