走ろう。


□1話
1ページ/2ページ



方南高校。


2年B組。


「水無月奏叶です。よく男子に見間違えられますが、女です。よろしくお願いします!!」


奏叶は転入生通例行事、自己紹介を教壇でしていた。


新入生の入学と被ったせいか、少し変な気もするが、大丈夫だろう。


「それじゃあ水無月の席は……」


窓際の一番後ろ。


これまた転入生定番の席。


奏叶はその席に着き、クラスメイトと馴染めるように話し始めた。





🌼*゚ 🌼*゚ 🌼*゚





「奏叶ちゃんって、部活入ってたの?」


奏叶の前の席、そしてこの学校初めて出来た友達の、佐野ハルが聞いてきた。


「ううん、帰宅部」


「え、そうなの?なんだか以外。陸上部とか入ってそうなイメージ」


「よく言われる。ハルちゃんは?」


「私はバスケ部のマネージャーしてるんだー」


「そうなんだ。バスケ楽しいよねぇ。これから部活?」


「うん。奏叶ちゃんもどう?バスケ部、見学しない?」


奏叶はしばらく考えてから、断った。


「えぇ!?なんで!?」


「だって今日新入生が入学したんでしょ?新入生対応に追われるんじゃない?」


その言葉にハルはハッとして時計を見た。


「ヤバッ!!もうこんな時間!!私新入生対応しなくちゃいけないんだった!!ごめん奏叶ちゃん!!また明日ね!!暇だったらバスケ部見に来てね!!」


しっかり自分の部活の宣伝をしてから、ハルは教室を飛び出していった。


「バスケ部もいいなぁ……」


でも、今日は学校の探検をすると決めていた。


この学校だと、自分も新入生も変わらない。新入生に紛れて学校探検も楽しいものだ。


食堂に着き、自販機のところにいく。


そこにはやっぱりというか、なんというか、例の自販機があった。


「凄いなぁ。私の行くところに絶対あるじゃん、この自販機……」


ピッ、と今日の気分で葡萄&蜜柑味ジュースを買う。


周囲にいる人はちょっと驚いた顔で奏叶を見ていたが。


「味は変わらないか……」


そう感想を述べながら、ふと時計を見た。


16時を少し回っていた。


そろそろ帰ろうか。
そう思っていたちょうどその時。


――ピンポンパンポーン。


放送を告げる音が鳴った。


『えー、スト部リレーします。学校の設備整えるの手伝ってください。スト部復活します!!よろしく!!』


それだけいうと、放送は切れた。


「……ストライド部、あんの!?」


これはヤバイ。
見逃してた。


どうしよう、どこに行ったら見れるだろうか。


アタフタしてると、ハルがやって来た。


「奏叶ちゃん!!さっきの放送聞いた!?」


「ハ、ハルちゃん。ストライド部、どこで見れる!?」


「あ、やっぱり興味ある!?あっちの吹き抜けならよく見えると思うよ!!付いて来て!!」


ハルの後ろに付いて行こうと食堂を後にする。


その時、髪の長い男子生徒とすれ違った。


――あれ、あの人スト部の見ないのかな。


不思議に思ったが、ハルに呼ばれてしまったので深く思わずハルに付いていくことにした。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ