走ろう。


□4話
1ページ/5ページ



翌日。


今日は寝坊しなかった。


おかげで藤原に追いかけられなかった。
心の中で安堵の息を吐く。


「おはよう奏叶ちゃん。ストライド部入部したって本当?」


教室に着くと、先に来ていたハルが挨拶ついでに聞いてきた。


「うん。黒髪くんもストライド部だったんだよー」


「えぇ、本当!?大丈夫だった?」


「うん、勝負申し込まれたから勝負したの」


「で、どうなった?」


「同着だったんだ」


「へぇ、そうなんだ……奏叶ちゃんはスポーツ万能なんだね!!」


ハルに褒められ少し照れ臭く俯いた。


「ちょっと失礼しまーす……あ、奏叶ちゃーん」


呼ばれた気がしたので振り向くと、穂積が奏叶たちに近づいていた。


「小日向君おはよう。どうしたの?」


「おはよー、奏叶ちゃん。ちょっとお願いがあって……」


「お願い?」


「うん。英辞書貸してくれない?」


英辞書。


「英和?」


「うん!!ある?」


「ちょっと待ってねー」


鞄の中を漁ると、英和辞書が出てきたのでそれを渡す。


「……あ、そっか!!ほづみんもストライド部だもんね!!」


「あれ、はるるんじゃんー。あ、ここはるるんのクラス?」


「え、2人とも知り合い?」


奏叶が聞くと、ハルが答えてくれた。


「うん。1年の時に同じクラスだったの。それで仲良くなったんだよねー」


「ねー」


意外なところで繋がりがあった。


「ほづみんって、小日向君の下の名前だよね。たしか穂積……」


「うんっ。はるるんが僕に付けてくれたんだよね!!」


小日向君はそういって私の英和辞書を腕に抱いた。


「あ、そうそう、奏叶ちゃん。今日の部活は部室集合で、ミーティングがメインになるから」


「はーい。あ、辞書私3時間目使うからそれまでに返してね」


「合点承知!!」


敬礼をして穂積は教室から去っていった。


「奏叶ちゃんとほずみんって仲良しなの?」


それまでの光景を見ていたハルがそういう。


「え、うーん……そうだったら嬉しいなぁ。なんせ、昨日入部したばかりだから……」


「そっか。ほづみん優しいから、きっと仲良くなるよ!!」


丁度その時チャイムが鳴って、先生が入ってきた。







🌼*゚ 🌼*゚ 🌼*゚





穂積から英和辞書を返してもらい、3時間目の英語の時。


奏叶はふと窓の景色を見た。


グラウンドではどうやら体育をしているらしい。
みんな走ってる。


――あれ、陸に藤だ。


明らかに速い速度で走っているのは陸と藤原。他の男子たちは息を切らしているご様子。


――元気だなぁ、男の子は。


「水無月ー、外見る暇あるんならこの問題解けー」


先生に見つかり、のろのろとその場に立つ。


英語が苦手な奏叶は心の中で溜め息をつく。


ふと英和辞書に目を落とすと、付箋に穂積らしき字でまさにその問題のアドバイスが書かれていた。


――ありがとう小日向君。何か奢るわ。


その問題を何とか答えて、再び席に着く。


そしてまたちらりと外を見る。


どうやら終わったようだ。
2人がその場に座っていた。


――どっちが勝ったのかなー。後で聞こ。


丁度終業のチャイムが鳴って、授業が終わる。


ガヤガヤとし始めた教室をBGMに、校舎に帰ってきた陸と藤原を見つける。


2人はなにか話していたが、陸が私と目が合った。


「水無月先パーイ!!」


おぉ、手を振ってきたよ。いや、私は好きだけどね、そういうの。


「俺の走り見てましたー!?」


「見てたぞー。速かったな!!」


そういうと陸は小さくガッツポーズをしていた。


「先輩!!今日藤原に勝ったんです!!」


「おー、そうかー。でも大声で報告しなくていいぞー、恥ずかしいから」


「あ、はい!!」


その返事も大きい。


ヒラヒラと手を振って陸と別れる。藤原が奏叶をガン見してたが。


「あ、あの子バスケ部の体験で凄いことしてた子だ。スト部入ったんだー。惜しいことしたなぁ」


ハルが陸を見てそう言った。


「陸バスケ部行ってたの?」


「うん。キャプテンのスクリーン抜けてて凄かったよ。兼部するって言ってたけど、結局スト部1本で行くんだね」


その話は初耳だ。
陸は運動すること自体が好きそうだから、当たり前か。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ