文豪ストレイドッグス

□前職当て
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爆弾芝居をし終えた後、全員近くの食堂に入った。




「すンませんでしたッ!」




席に着いた直前、谷崎が敦に頭を下げた。




「へ?」




「その……試験とはいえ随分と失礼なことを」




その後、全員が自己紹介をし終えた後、敦が言った。




「そういえば皆さんは探偵社に入る前は何を?」




栞も気になったのでコクリと頷く。



シンッと静まり返る机。



敦と栞は同時に顔を見合わせた。



「何してたと思う?」



「へ?」



太宰がニヤニヤしながら二人に言う。



「なにね、定番なのだよ。新入りは先輩の前職を当てるのさ。栞ちゃんもやってみてよ」




「は、はい……?」





「じゃあ……」




敦は谷崎兄妹や国木田の前職業を当てて行ったが、太宰の前職で止まってしまった。




「役者は照れるねー」




本当に照れているように頬に手を添える太宰。




「栞ちゃんは?」




「うーん……私も思いつかないですね」




「それじゃあここの支払いはお願いね、ご馳走様ー」




太宰はそういって食堂を出て行った。




「あの、太宰さん」





栞は食堂を出た太宰を慌てて追いかけた。





「あの、太宰さん……私の勘なんですけど……」






「ん?何だい?前職当て?」






「はい。もしかして太宰さんって……」





栞は太宰に屈んで貰うよう頼み、こそっと耳打ちした。






「もしかして、マフィア……ですか?」






太宰はゆっくりと元の姿勢に戻ると、栞の頭を撫でた。





「大正解。どうする?軍警にでも突き出す?」





「私は……何もしません。多分、太宰さんがいないと、この探偵社は駄目な気がするので」





栞はそういうと国木田たちの方へと戻っていった。





「何もしない……ね。やっぱり変わらないなぁ、ミカゲは」




太宰はそういうと探偵社へと足を運んだ。







✿    ✿    ✿








依頼者の女性が来たことを知り、栞は紅茶を女性の前に出した。





「ありがとうございま――」




女性は栞の顔を見ると、一瞬固まってしまった。




「あの……?紅茶、駄目でしたか?」




栞が声をかけると女性は何でもないという風に首を横に振った。




「いえ、紅茶は全然構いません。ありがとうございます」




栞はその言葉を聞くと敦たちの後ろに立った。




女性の依頼を聞き、谷崎兄妹、敦、そして栞が行くことになった。




「ど、どうして私も……」




「そうですよ、栞さんは関係ないでしょう?」



敦も同意して加勢に入る。しかし、国木田はそれを無視し、一枚の写真を取り出した。



「こいつには遭うな。遭ったら逃げろ」




「この人は――?」




「マフィアだよ」



突然の太宰に驚く敦と栞。



「尤も、他に呼びようがないからそう呼んでいるだけだけどね」




「港を縄張りとする兇悪なポート・マフィアの狗だ。名は芥川。マフィア自体が黒社会の暗部のさらに陰のような危険な連中だが、その男は探偵社でも手に負えん」




「何故――危険なのですか?」




「そいつが能力者だからだ。殺戮に特化した頗る残忍な能力で軍警でも手に負えん。




俺でも、奴と戦うのは御免だ」
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