文豪ストレイドッグス
□神影という人物
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「ところで神影さ、君どっち側?」
結局目覚めなかった敦と血塗れの谷崎を肩にかけながら神影に話しかける太宰。
「え?アタシは――うん、栞の意思に従おうと思うよ」
「栞ちゃんの?」
「ああ。今のこの身体の主導権は栞だからな。アタシはその意思に従うまでだ」
止血帯を張りまくったナオミを抱きかかえながら神影が言う。
「とりあえず、探偵社に運べばいいのか?」
「うん、そう。本当によかったの?彼らの元に戻らなくて」
「別に構わんよ。孰れ連れ戻しに来るだろうし。それに、何度も言わせるな。今の子の身体の主導権は栞だ。それ以上でもそれ以下でもない。アタシはそれに従うだけ」
「……でも君さ、芥川のグループだったんだね」
「まぁね。アンタが抜けなければ、アタシはアンタの部下のままでいられたんだけどなー」
横目で太宰を見る御影。
「その視線は相変わらず痛いなー、神影。私がその視線が苦手なのを知っているだろう?」
「あぁ、知っているさ。だからやっているのだよ太宰君」
神影はニヤニヤしながら太宰を見ていた。
「神影は本当に性格が悪いねー」
「お褒めに預かり光栄です」
六兎神影と六兎栞。
影と光のような存在。
神影は影の部分、ポートマフィア所属や闇市場での事件全てを受け持ち、栞は光の部分、優しさや思いやりを受け持っていた。
神影は栞を通して全ての世界を見ているので、全ての事実を知っている。
栞は神影が表に出ている間は、深い昏睡状態に入っているので闇の現場は全然知らない。
いや、知らなくていいのだ、こんなことは。
「……栞には、こんなことを知ってほしくはないからな」
「……だからマフィアの時は神影単体だった訳ね」
「そういうことだ、太宰君」
「じゃあさ、こういうこととか栞ちゃん知ってるの?」
「こういうこと?」
「うん」
太宰はそういうと神影の唇に自分の唇を落とした。
「私が神影を好きっていうことを」
「――……はぁ!?」
太宰は飄々とした風情で二、三歩先を歩く。
「お、おい待て太宰!!それは真か!?偽りではないか!?いや、栞はそういうことは知らないが!!ちょっと待て太宰!!悪いことは言わない、今すぐ先刻あったことを取り消せ!!うん、それがいいそれがいい!!」
「神影、いつも以上に混乱してるね」
「お前がそんなことをするからだろう!?」
「ナオミちゃんが起きるから騒ぐのはやめようか」
「ならば貴様は谷崎と敦を苦しめるな馬鹿野郎」
「あ、やっぱり栞ちゃんの情報は共有してるんだ」
「……だったらなんだ」
「いや、面白いなー、と」
「ふ……ふざけんなあああああああああああ、太宰ィィィィィィィィィィ――――!!」
神影の叫びは、空の彼方へ消えて行った。