文豪ストレイドッグス
□襲撃時の裏話
1ページ/2ページ
谷崎side
意識を取り戻すと、与謝野先生と栞ちゃんがボクを見ていた。
栞ちゃん、無事だったのか……良かった……。
与謝野先生はボクとナオミを栞ちゃんに任せて事務所の方へ戻っていった。
「……栞ちゃん、芥川に何かされなかった?」
「はい……というより、記憶が無いんですよね、気が付いたら隣に太宰さんが谷崎さんと敦君を抱えていて、私の腕にはナオミさんいて……本当に驚きました」
「記憶がない?」
「はい。こう、ふわっとなったと思ったら、記憶が切れて、気が付いたら事務所の前に居たんです」
「太宰さんは何か言ってなかった?」
「それが、うまい具合にはぐらかされてしまって……」
おかしい。
太宰さんが来た時点でおかしいと思うが、その前に記憶が無くなっているというのがおかしい。
太宰さんがあの場に駆け付けたのはきっと盗聴器か何かで聞いていたからだろう。
しかしそれだとしたら、栞ちゃんが記憶をなくす要素がどこにある?
一見見ると外傷はないし、与謝野先生も栞ちゃんをつまらなさそうに見てたし。
「……誰だ、君は」
「……え?谷崎さん、いきなりどうし──」
「栞ちゃんの中にいるのは誰だ」
「──……ククッ」
突然変わる栞ちゃんの雰囲気。
「……君は?」
「初めまして谷崎潤一郎さん。アタシは六兎神影。彼女、栞のもう一つの人格」
「……神影……何処かで……」
「お、流石探偵社の手代!!アタシの名前を聞いただけで分かるとは!!」
神影はどこか楽しそうに話す。
「アタシはポートマフィアの一員さ。でも今は、抜けてると言っても過言ではないね。現にそうだし。栞の意志に添ってここにいるんだから、アンタたちの命を奪おうとかは思っていないさ。──そんな怖い顔すんなよ、もう戻るさ。今日は挨拶しに来ただけ。何より、長く変わり過ぎると記憶喪失みたいになるからねぇ」
神影はそう言うと戻ったらしい。
栞ちゃんは、慌てて周囲を見渡していた。
「……また、記憶が……」
「栞ちゃん、本当に覚えていないの?」
「え?」
「……いや、なんでもない」
ボクはもう何も突っ込まないで置いた。
すると、銃撃の音がした。
「っ!?」
「な、何!?」
「栞ちゃんはナオミを見て!!」
「はい!!」
栞ちゃんはナオミを見るために隣のベッドへと向かった。
恐らくこれは襲撃だろう。敦くんを狙ったものだと思う。
国木田さんたちがきっと何とかするから大丈夫だろうけど。
六兎神影。栞ちゃんとは全く違う雰囲気を放つ人物。
「……記憶の共有は、していないのか……」
そうでないと軽い記憶障害を起こしている栞ちゃんの理由が付かない。
「……調べる必要がありそうだな」
ボクはそういうと銃弾がした方に目を向けた。