白の従者(マギ)

□序章
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はぁ、はぁ、はぁ。





腕や脚、顔などに多数の傷を負う少女がいる。





その少女は走っていた。





少女は、目の所に包帯が巻かれており、それが視界を遮っている。




「早く、早くついて……!!」




少女が探しているのは『宝物庫』。




何かにあたった。




感触を確かめると、壁とは明らかに違う感触。



扉だ。




「開けっ!!」




凄い音を立てながら扉が開く。




そこがまさに『宝物庫』だった。




直感で進む少女。




足元にあった何かにつまずき、少女は転んでしまった。




手にあたった水晶のような丸いものが光りだす。




しかし、少女の目は光も何も写さない。




『……我を解き放ったのは貴様か?』





声が聞こえる。





『なんだお主、目が見えぬのにここへ来たのか?』





「……生まれたころから、目が見えなかった。だから、私はいらない子だって、捨てられた」





『捨てられた……。ではなぜ、ここに貴様はいる?』





「何年かかってもいいから、【迷宮】を攻略したかった。私の存在意義を確かめたかった」





少女はそういうと、包帯を外した。





眼に光は入っていない。






『……可愛そうに。我が名はマルバス。治癒能力を司るジン。貴様は「王」の器にふさわしい。貴様の名は?』






「――……華、青蓮」






『では青蓮。貴様を我が主としよう。願い事はないか?』





「願い……ごと?」





『そうだ。何かないか?』





少女――青蓮は何か考えた後、声を張り上げた。





「私の……目を。戦闘の時だけでいいから、貴方の目を私に貸して!!」





『――了解した。では、戦闘時のみだけ貴様にわが『眼』を授けよう』





「……ありがとう」




ジン、マルバスは少女の腕の装着されていた剣に憑依した。






少女、青蓮は無事に地上に戻ったのであった。



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