妖変化
□的場家との因縁
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それから、しばらくは穏やかな日々を過ごしていた。
あの事件が起きるまでは。
『奥方、主を知らぬか?』
『妖変化』の中から勝手に出てきた蓮池は、仏壇の前に放置されていた『妖変化』を懐にしまいながら咲良を探した。
『……奥方?』
蓮池は妖力で主を探した。主は今、この屋敷にはいない。
奥方の気配は、微量であるが感じられる。
『……奥方、何処だ?』
蓮池は少し足早になりながら咲良を探した。
厨房へ足を向けると、咲良の着物の裾が見えた。
『奥方、ここにいられた――』
蓮池は言葉を詰まらせた。
そこには、血を吐いて倒れている咲良の姿があった。
『奥方!!』
蓮池は咲良に駆け寄り呼吸を確かめる。
微かだが息をしている。
『っ、あの馬鹿はどこにいるんだ!!』
蓮池は『妖変化』の中で唯一『妖変化』の中の妖を自由に召喚できる妖である。
その時召喚された妖は蓮池の妖力を微量だがもらっている。
『お出でませ、影霧!!』
蓮池は千景が当初契約を交わした影霧を出した。
『いかがした、蓮池』
『千景を探してきてくれ。奥方が倒れた。大至急連れ戻せ』
『心得た』
そういうと影霧は姿を消した。
『雹霞!!出てこい!!』
すると今度は雹霞が『妖変化』の中から出てきた。
雹霞は本当は男の形をした妖である。体の持ち主に反応して、男になったり女になったりする。
『お前……影霧出す時と俺を出す時の上下さヤバいな』
『うるさい、奥方のどこが悪いか少し調べろ。神の末裔である貴様が調べなければわからん』
『奥方!?龍の末裔の貴様もそれぐらいできんのか』
『我をなめるな。自力で出るのと同時に、影霧と貴様を出したんだぞ。妖力の使い過ぎでこちらが倒れる』
『……了解した、少し離れろ』
雹霞は咲良の周りに薄い結界を張り、妖力を使って咲良の身体を調べた。
『っ……これは……!!』
『どうした?』
『まずい、まだ主は戻ってこないのか!?』
『今影霧が探しに行っている!どうした、奥方は一体どこが悪いんだ!?』
『奥方は……
――呪詛にかかっている』
影霧から事情を聴いた千景は、慌てて屋敷に戻った。
「咲良!!」
そこにいたのは、布団に寝かされ、雹霞と蓮池の妖力によって結界が作られている中に妻がいた。
「咲良!!」
『待たれよ』
結界の中に入ろうとした千景を影霧が止めた。
「どうして……」
『主ほどの妖力を持っていても、この結界の中に入ってはならぬ。いくら主でも、死ぬぞ』
「だが、咲良が……」
『案ずるな馬鹿主』
蓮池が目線だけこちらに向けていった。
『我と雹霞が結界で守っておる。心配するな』
「……すまない、蓮池」
千景はそこにストンと座った。
「……蓮池、雹霞。咲良を……頼む」
『『分かっておる』』
二人の式神(妖)は同時に言い、妖力の結界を強化した。