白の従者(マギ)

□序章
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それから五年ほどの月日が経った。




マルバスからは『眼』を貸すことはなかった。




青蓮はそれでいいと考えた。




闘うことはあまり望まない。




しかし青蓮は幼い頃から生きるために戦い抜いてきた。




今いるのは煌帝国の下町の貧困街。




そこに今日、ある人物がいた。




煌帝国第一皇子、練紅炎。




青蓮は目が見えないため、誰が誰だかわからない。




「皇子、足元にお気を付けを……」




「判っているさ」



青蓮がいる近くに紅炎一行がやってきた。




「声……?」



青蓮は声がある方向へと進んでいった。




声を聴いてみると、何処かで聞いたことのある声。




眼が見えないが、感覚でわかる青蓮。ずんずん進んでいく。





その時ちょうど角から道へ出た。直後、紅炎もその角へ差し掛かる。




ドンッ。




「皇子!?」




「っ……誰だ?」




(やだ、人にぶつかっちゃった!?しかも、皇子って……)





「この無礼者!!皇子の前を通るなど、言語道断!!今すぐ叩き切ってやる!!」




側近の一人が、腰に差している剣を取り出す。




「――待て」





立ち上がった紅炎が、剣を今にも振りかざそうとしていた側近を止める。





「し、しかし皇子……」





「この娘をよく見ろ。目に包帯をしている。お前、目が見えないのか?」




紅炎に聞かれ、青蓮はおずおずと申した。





「……はい。生まれた時から、眼が見えず……」





「そうか……行く宛てはあるのか?」





「いいえ……ありません。幼い頃、親に捨てられ、ここを彷徨っております」





「そうか……名前は?」




「華青蓮です」




「よし、青蓮。来い」



「え?」




「城に来い、青蓮。そうすれば、不便はないぞ」




「そ、そんな、恐れ多い……!!」




「なんだ?俺の言うことが聞けないのか?」




話しているうちに、青蓮は思い出した。





第一皇子、練紅炎。






「そ、そういうことでは……」





「よし、じゃあ、決まりだな。来い、青蓮」




「――はい」




青蓮は紅炎に立たせてもらいながら城へと向かった。
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