白の従者(マギ)

□神官
2ページ/2ページ






神官ジュダルが待つという中庭に足を踏み入れた青蓮。





「し、神官様……?」






一応声をかけ、音や気配で感じてみるが、何も感じない。






「……」






瞬間、背後から禍々しい気配が漂ってきた。





「っ!!」





飛びのけると、自分がいたと思われた所にヒヤリとした空気が漂う。






「……へぇ、本当に目ぇ見えねぇんだな」






首筋にピト、と当てられる冷たいもの。





「っ……神官……様、ですか?」






「正解。お前は……青蓮だっけ」





「左様でございます……私に御用とは……一体……」





「お前がどんな奴かと思って気になっただけ……あ?」




ジュダルは青蓮の腕に違和感を感じ、触る。





「……剣でも仕込んでんのか……しかも」




ジュダルは力尽くで青蓮の袖を上げ、腕に装着されている剣を見た。





「「金属器」使いか」





「っ……!!」





バレた。






「何処の【迷宮】だ……?ユナンの奴が出現させたやつか」





ジュダルは物珍しそうに青蓮の剣を見る。





「出現させるのが一番手っ取り早いか」





「やっ、やめてくださ……――!!」




カクン、と足に力が抜ける。




「あ?どうした?」




「……女にこのように力尽くで奪うとは。マギとしてどうなのでしょうか?」





「このルフの量……マルバスか」





ジュダルは青蓮の首筋に宛てていた棒を外し、後ろに数歩下がる。






「お久しぶりです、マギ。この子をいじめるは、やめていただきませんか?」





「なんでだぁ?」




「この子は、まだこの城にも、この国にも慣れていません。ましてや貴方様のようなマギが現れれば……どうなることやら」





青蓮の身体を乗っ取ったマルバスは、ジュダルに意見を述べた。





「……そうかよ。じゃあ、いいや。お前戻れ。青蓮に」





「彼女に何もしないことを条件とするならば」





「安心しろ、何もしねえよ」





「では、我はここで」





マルバスは青蓮に体を返すと、「金属器」の中に戻っていった。





「っ……し、神官様……?」





「あ?」





また何かされるのではないのかと、青蓮はビクビクしていた。





「なんもしねぇよ。それより青蓮。お前白龍の従者なんだよな?俺の側近に変わらねぇ?」





「えぇ!?」






「だってどうせ白龍の奴お前を除け者扱いしてんだろ。俺だったら――」






「ジュダル」





その時背後から声がかかった。





見てみると紅炎が。





「紅炎か」





「こっ、紅炎様!?」





紅炎は二人を交互に見た。





「ジュダル、本来の目的を忘れているだろう」





「――……あ」





ジュダルは何かを思い出したように声を上げた。





「そうそう!!お前本当さ、変わったやつだよな」





変わっている人に変わっているとは言われたくない。





と心の中で思う青蓮。






「で。お前さ。








何処から来たの?」












「――え?」





青蓮は突然の質問に唖然としてしまった。






「わ、私は……」





あれ。







「わた、し、は……――」






どうして?








「わ……た……し」








どうして――































何も思い出せないの?








































「っ、いや……いやあああああああああああああ―――――――――――――――!!!!」


























突然叫びだした青蓮に驚く二人。








青蓮はそのまま倒れてしまった。







「――っ、青蓮!!」







紅炎が駆け寄ってくるのを見ながら、青蓮は意識を手放した。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ