白の従者(マギ)
□眼
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白龍に言われてから、青蓮は自分の部屋に入り、少し仮眠をしてから庭へ出た。
特にやることもない。
仕事は昨日で全て終わらせてしまった。
「……どうしましょうか」
「なにがどうするんだ?」
「本日お休みをいただいたんですが、特にすることもなく……って、え?」
何かしらのデジャブを感じつつ、青蓮は声がした方向に振り向いた。
「青蓮、今日は休みか。ならば、俺と話をしないか?」
「そのお声……紅炎様!?」
声から紅炎だと判断した青蓮は、慌てて膝をついた。
「せ、先日は大変な失礼をいたしました……!!突然叫び、倒れたと白龍様から聞きました……。紅炎様の前でそのようなご無礼、どうかお許しください……!!」
青蓮はビクビクしながら言った。
紅炎はそんな青蓮を見ていたが、やがて豪快に笑いだした。
「こ、紅炎様……?」
「何、平気だ。では、罰として俺の話し相手になってくれ」
「そ、そのような……私には……」
「此れは罰だ。罰は素直に受け入れろ、青蓮。いいな?」
紅炎は有無を言わせず青蓮を書斎へと連行した。
✿ ✿ ✿
白龍は、鍛練をしながら、昨夜のことを思い出していた。
悪夢を見ていた。
二人の兄、父が殺される夢。
全ての元凶となる、練玉艶。
復讐を果たそうとして、毎晩嫌な夢ばかり見ていた。
そんな折、青蓮が慌てて駆けつけてきた。
正直言うと、嬉しかった。だから、甘えてしまったのかもしれない。
青蓮は嫌な顔一つせず、ずっと自分の側に居てくれた。
こんなことをしてくれた従者は、誰一人いなかった。
迷惑ではなかっただろうか。
だが、今日の朝彼女を見たとき、少し罪悪感があった。
眠そうな彼女の顔。とても愛おしかった。
「こっ、紅炎様!!どちらへ向かわれるのですか!?」
突然青蓮の声が聞こえてきた。
驚きながらそちらの方へ向くと、紅炎が青蓮の腕を引っ張りながら書斎の方向へ向かっているのが見えた。
「何、ただの話し相手になってもらうだけだ、安心しろ」
紅炎は薄く微笑みながら歩いて行った。
白龍はその光景をただただ見ているだけだった。
「なんだ……今の」
白龍はポカンとした状態で持っていた槍を落としてしまった。