BLEACH

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*ちょっと過去話↓

『…よろしくお願いします』

音羽が護廷十三隊に入らない死神だと紹介された時の事を、俺は今でも覚えてる。
愛想は良い方ではなく、周りの隊員の質問にも淡々と答える姿は自然と目に残った。
それは他の隊長、副隊長も同じようで、次第にそいつとは絡むようになっていた。
今では全員と面識があり、しかも無所属と言う事でいろんな隊にお呼ばれしているようだ。
俺も何回か呼び出したりしているが、大した事ではない。

『更木隊長は、…本当に強いんですね』
「どういう意味だ?」
『いえ…私なんて、解放状態の斬魄刀でも手も足も出ないのに、更木隊長はすごいな、と』
「それは褒めてんのか?」
『当たり前です』

ふっと、微笑む音羽は話をするようになってからよく見るようになった。
別に愛想が悪いわけでもないのか、と思い直す事になる。
何より戦闘中では絶対に見せないような笑みに惹かれたと言うのは否定しない。
しかしこれは恋情とは違うのだ。もっと違う、護りたいと思わせるような何かだ。
他の奴らもそう思っているだろう。阿散井や藍染を除いて、だが。

「最近はどこの隊舎に行ってんだ?」
『…そうですね、最近は藍染隊長によく呼ばれます。忙しいみたいで』
「そうか…」

忙しい?まさか。確かに隊長はそれなりに忙しいもんだ。
それでも音羽の手を借りる程でも無いだろうが。
藍染は何だか目が他の奴等とは違う気がするんだ。
音羽の手の事も異様にしつこく聞いていたし、何だろうか。
そうだ、俺はあの時からずっとおかしいと思ってたんだ。

「花の溢れる手、か」

ぽつりと、ワザとか知らないが俺に聞こえるように言った藍染に顔を顰める。
俺はずっと、お前は怪しいと思ってたんだ。

『空、空色…、』

時折空を見て辛そうな顔をしている音羽を見てほくそ笑んで、楽しそうに。

お前は一体、音羽に何をしようとしてるんだ。

*本編戻ります↓
音羽視点

駄目だ、寒い。氷河のような匂いもする。
でも分かってる。この霊圧は、間違いなく日番谷隊長のものだ。
それじゃあ日番谷隊長とイヅルが戦ってるの?
いや、違うか。まず二人が争う理由だって分からない。
それに、もう一つの霊圧は…市丸隊長?

『訳分かんない…っ』

瞬歩のスピードも、考えるに連れ速度を増していく。
もうすぐそこだ、イヅルの霊圧も、隊長の霊圧も。

『…なに、これ…』

一瞬足を止めて、空を仰ぐ。しかしそこにはいつもの晴天は無く、黒い雲が広がっていた。
肌寒い感じも今まで以上だ。それに、霊圧の強さも。

『まさか…氷輪丸…?』

そうだ、この肌寒さも、これですべて納得がいく。
日番谷隊長が氷輪丸をイヅル相手に出すとは思えない。
ならばやはり、日番谷隊長と戦ってるのは市丸隊長なのか。
もう目で見て確かめようと、もう一歩踏み出そうとした時、耳を劈くような悲鳴が聞こえた。

「う…うあああああっ!!!」
『!!!…今、の…っ、』

聞き間違えるはずがない。私が一番好きな声、が。
どうしてこんな酷い悲鳴を上げているのだろうか。

『間違いじゃない…イヅル!!!』

不安なんて物じゃなかった。
霊圧は酷く揺れてるし、刀がぶつかり合う音は近くまで聞こえて来ているし。
もし、さっきの悲鳴で全てが終わっていたら?
考えるだけで体が固まって、芯から冷えていくようだ。

『日番谷隊…』
「くっ!!」

ガンッと、嫌な音が当たりに響いた。
私は目の前で起きている光景に、目を見張った。
どうして、どうして桃とイヅルが倒れて、市丸隊長と乱菊さんが対峙しているのだろうか。

『日番谷、隊長…これは…どういう事、です、か?』
「音羽…何でここに来た…!」

苦しそうに顔を歪めて、日番谷隊長は私を睨む。
その言葉に返事を返さないで辺りを見渡す。イヅルが、いない。
元より氷輪丸の影響で暗くなっていて、余計に見えづらい。

「音羽…、」
『!…イヅル、何が…』
「駄目よ!!!」
『っ!ら、乱菊さん…』
「音羽、吉良に近づいちゃダメ」

そいつはもう敵なのよ、と、乱菊さんの口が動いた気がした。
てき、テキ、敵?イヅルが…私達の?
全く状況が読み込めないし、イヅルは目を合わせてくれない。

『イヅ、ル、』
「……っ、」
『何でこんな、』

こんなの、確定じゃないか。
どうして否定しないの。

どうして…目を合わせてくれないの。

*
恋次視点

決意を決めて習得した卍解でも、朽木隊長には叶わなかった。
でも、これで終わりじゃねぇんだ。俺は、ルキアを助ける。
決めたんだ。もう、後悔なんてしたくねぇ。
あんな思いをするのはもう、ご免なんだ。

「…強くなりてぇってのに、お前は理由があるか?」

卍解を習得する時、一護の奴にそう聞いた。
あんなに強いあいつが、もっと強くと、願う理由は何なのかと。
だけど、一護はそんなもんねぇ、と言うだけだった。

「俺は護りたいだけだ。…恋次は理由なんてあんのかよ」

ムスッとした顔でこちらも見ずに言う一護は、相当切羽詰っているんだと分かった。

「…朽木隊長を超えたい以外にも、ある」
「何だよ、それ」
「お前と同じだ、一護」
「あ゛?」

今度こそこっちを振り返って明らかに不機嫌そうな顔をする。
何だよ、別にパクった訳じゃねぇからな。
昔から、ずっと昔からだ。音羽と出会ってからずっと。

「護りてぇんだよ、…音羽を」
「…お前それ、本人に言ったのか?」

何か思い当たるのか、恐る恐るといった様子で一護が言った。

「言うわけないだろ、こんな事」
「やっぱりな…、」

あーあーあー、とかもうため息なのか何なのか分からない声をあげて、冷めた目で俺を見る。
何だよ!俺がなんかしたのかよ!

「お前な…そんなんだから他の奴に取られるんだよ」
「な…っ!お、お前には関係ねぇだろうが!」
「さーどうだろうな。俺も…かもしれねぇし?」

さらりととんでもない事を言った一護に目を見張る。
まさか、藍染隊長以外にもこんなとこに敵がいたのか。ああ…一角さんもだったか。
つーか…他の奴って誰の事だよ。吉良か?
もし吉良だったら問題は何もねぇんだけどよ。

「…マジかよ」
「というか俺の事はどうでもいいんだ。…音羽に、ちゃんと言ってやれよ」
「………」
「じゃねぇと、取り返しつかねぇ事になるぞ」

一護と面と向かって話したのは初めてだっただろうか。
俺とあいつの事なのに、嫌に冷静に話していた。

「…分かってんだよ、ンな事は」

頭にこびり付いている会話を思い出し、苦笑する。
どうしたって、俺は器用に話す事が出来ないのか。
きっと音羽に伝わってないから、一護は俺にそう言ったんだろう。
実際、一護達が尸魂界に来てから、音羽とはまともに話をしていない。
顔は一瞬合わせたが、音羽が倒れてしまって話はできていない。

「そういや、あれからどうなったんだ…」

何だか一角さんが音羽を担いでるのを見たような気が…するんだが。

俺が考えに耽っていた時、それは突然始まった。

「チッ…もうこんな時間かよ!」

刀に手をかけ、双極に向けて走り出した。
ルキアを助け、尸魂界にまた静けさが戻って来たら、必ず音羽と話をしようと決めて。


心体共に、貴方へ誓う
(お前には、直接言おう)
(何度も何度でも、聞き飽きるくらいに)

振り向いてくれれば、何でも良かったから

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