兎さんと蜘蛛さんの甘い日常
□兎さんの反応
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「し、新開君の、意地悪っ…!」
教室に入るなり、新庄さんが俺の所に来て言った。
(来ると思ったけどね)
若干、いやかなり涙目になりながら顔を真っ赤にする新庄さん。
プルプル体を震わせながら「新開君の、せいで…、恥ずかしい思いしたんだから、ね…!お、怒ってるんだから、ね…!」なんて言われても全く効果がないと言うことを新庄さんは知っているのだろうか。
「俺は別に嘘は言ってないよ?」
「う…、それは、そう、だけど…」
新庄さんが「巻ちゃん」の事を気になっていたのは知っていた。
恋愛感情としてではないが、大好きな尽八に『巻ちゃんは大切な人だ!』と言われた時の顔は傑作だったな。
巻ちゃんが男だとも知らず尽八が居なくなった後、ゆらゆらと瞳を揺らしながら俺に「し、新開君……。あの、ま、巻ちゃんさんって……、どんな人か、知ってる?」って聞くもんだから、少し意地悪したくなった。
「巻ちゃんは…、モデルも羨むような長い手足と綺麗な髪に…。あ、あと目の下のセクシーほくろが印象的だったな」
「………!そ、それ、本当に?」
「うん。本当に」
(嘘じゃないよ、嘘じゃ。)
話を聞けば、どうやら新庄さんは昨日、巻ちゃんに会ったようで女だと思っていた巻ちゃんが男だと知って俺の所に。
(尽八のライバルって言葉で男だって気づくと思うんだけどな…)
「別に俺は巻ちゃんが女なんて一言も言ってないけど?」
正論を返せば「それは、そう、だけど…」と言葉を詰まらせた。
しゅんと垂れた眉に少し意地悪しすぎたかなと思って「で…、巻ちゃんと会ってみてどうだった?」と話を変えれば、一気に真っ赤に染まった新庄さん。
(これは何かあったのかな)
思ってもいない反応に思わず口元が上がったのが自分でも分かった。
「何か、あったんだ」
「へっ?……いや、別、に…」
目線を逸らした。
目が泳いでいる。
行動1つ1つが「何かありました」と言わんばかりに動揺している。
「もしかして、好きになっちゃった?」
すぐに「なんてね」と言うつもりだった。
でも真っ赤に顔を染めて「えっ、」とか「あの」と口ごもる新庄さんを見て、その言葉を飲み込んだ。
「え…、図星?」
「ち、違うよっ!」
「へー、そうなんだ」
ニヤニヤと、緩んだ口が元に戻らない。
楽しいとは少し違うけど、ワクワクする。
「巻島君は、その…、とても、良い人だったよ…。でも、好きとか、そういうのは…」
(…そんな顔で言われても、説得力ないけどね)
兎さんの反応
(ほ、本当に、違うからね!)
(ハイハイ、授業始まるよ)
((うまく逃げられた……))
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新開君の口調が迷子。