兎さんと蜘蛛さんの甘い日常

□蜘蛛さんからのお誘い
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『おはようございます。今日はいい天気ですね』そう送れば『おはよう。こっちは曇ってる』と返ってきて。
『巻島君はどんな自転車に乗ってるんですか?』と送れば、丁寧に自転車の写真を送ってくれた。

巻島君も部活があって、自主練があるはずなのに、こうして返信が来るのはやっぱり嬉しい。




こうした巻島君とのやり取りをして二週間が経とうとしている。






『おはようございます。今日もいい天気です。巻島君は練習中ですか?』


毎朝、日課となった尽八君との待ち合わせ。
と言っても、私が尽八君と居たいから待っているだけだけど。

その間、巻島君に毎朝恒例となった、おはようメールを送る。


「茜、遅くなった」

「お疲れ様、尽八くん」

「毎日待っていなくてもいいんだぞ?」

「私が、尽八くんと居たいの」


中学までは毎日一緒に登下校したのに、高校に入学してから尽八くんは寮暮らし。
クラスも違うし、1日会わない時だってある。

(…そんなの嫌だし、寂しいもん)

「そうか!茜は可愛いな!」


嬉しそうに笑う尽八くんを見て、私も自然と笑みがこぼれる。


「お前等、本当に付き合ってネェのかヨ…」

「む!何だ、荒北。羨ましいのか?」

「そうなのか、靖友」

「ちげぇヨ!ボケナス共!」


ちょうど練習終わりの靖友君と新開君も来て、みんなで教室に行くことに。


「それじゃ、昼休みに」

「ばいばい、尽八くん、靖友君」


尽八くんと靖友君とは違うクラスなので、ここでお別れ。
「またな!」と大きく手を振る尽八くんに、私も同じように手を振り返して。


「行こうか、新庄さん」

「うん」


同じクラスの新開君と教室まで一緒に行く。


「あ、そういえば、新庄さん」

「? どうしたの、新開君」

「裕介君とは、どうなったの?」

「へっ?!」


素っ頓狂な声が出てしまい、周りからの視線が一気に私に向けられる。
恥ずかしくて、肩を縮めれば、新開君はクスクス笑って。


「べ、別に、どうもなってないもん」


頬を膨らませれば、指で潰され「ぷっ」と間抜けな音が漏れて、また笑われる。

新開君のからかいをとことん無視していると携帯が震えた。


『おはよう。今朝練終わったところ。今日はこっちも晴れてる。』


巻島君からの返事で、練習で疲れているはずなのに、こうして返信をしてくれるのが凄く嬉しい。


『お疲れ様です。』

(えと、ゆっくり休んで下さい?…でもこれから学校なわけだし…、うーん)


返信の内容を考えていると、手の中からスルリと重みが無くなった。
そしていつの間にか携帯は新開君の手の中にあって。


「へぇ…、随分と仲良くなったんだね」

「ひ、人の携帯見るなんて、プライバシーの、侵害、だよっ」


返して、と新開君の手から携帯を奪おうと背伸びをするが、それは身長的に無理な事で。


「もう、ラブラブだね」

「ち、ちがっ、違うよっ…!」

(巻島君は、尽八君の大切な人だもん…。尽八君の大切な人は、私の大切な人…)

「そんな顔するなよ。ほら、」


どんな顔だろうか。
とにかく私は新開君が困るような顔をしていたらしく、無事に手元に携帯が戻ってきた。
一応、何か変なことをされていないか確認。
新開君は「何もしてないよ」なんて言ってるけど、一応ね。

チェックしているとまたも携帯が震えて、メールを受信した。

(巻島君からだ…)

『今度の日曜日、峰ヶ山でレースがある。良かったら見に来るっショ』

「…!!」

(こ、これは……、誘われたって、ことですか?)


こんなにもドキドキと震える心臓は初めてで。
この感情の呼び方が分からない。

でも、嬉しいって事には変わりなくて。


私はすぐさまOKの返事を返した。





蜘蛛さんからのお誘い
(ど、どうしよう。し、新開君…!)

((ウサ吉みたいだな…))


 
 

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