企画小説

□カラメルに絡めて
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カラメルに絡めて





「市丸先生っ!おはようございます!」


教室にも向かわずに、一番最に足を運んだのは保健室。
そして大好きな彼の名前を呼べば、呼ばれた本人は少し苦笑い。

(ああ、今日も眼鏡と白衣がお似合いです…)

いつ見ても惚れ惚れしてしまう姿に、無意識にニヤケてしまい、おでこをつつかれる。


「おはようさん。今日も朝から元気やね」

「市丸先生も朝から格好いいですね」

「何言うとんねん」


また苦笑いを浮かべて、コーヒーを一口飲む。

(コーヒーを飲む姿も美しい)

決してコーヒーが入っているカップになりたいとは思っていないが、なりたいかと聞かれれば、素直に頷くであろう。

とまあ、余談は置いといて。


「ねえ、先生」


語尾にハートマークが付きそうなくらい甘えたな声で市丸先生に近づけば、彼は呆れたように(どちらと言えば諦めたように)返事をくれた。


「今日、市丸先生のお家行っても…」


そこまで言うと、市丸先生はその長くて綺麗な人差し指を私の唇の前まで持ってきた。
言葉はなくても「それは言うな」と言われているようで。


1ヶ月位前から付き合いを始めた私達。
先生と生徒という立場だけど私は市丸先生に一目惚れ。
毎日のように「好きです。付き合って下さい!」としつこく告白した結果、先生が折れて付き合うことに。

でもデートはもちろん、2人で甘い時間を過ごしたりするなんて事は一度もなく。

(…市丸先生、本当に私の事好きなんですか?)

この言葉はぐっと飲み込んだ。
言ってはいけない気がするから。

ムッと頬を膨らませていると、先生はクスリと笑い頭を撫でる。
こんな子供扱い望んでないのに、市丸先生から触ってくれるなんて滅多にないから、これすらも嬉しい。


「ほら、もう教室に戻り。授業始まるんと違う?」

「……分かりました。また、来ます」


それに返事はなかった。
よく言えば来てもいいということ、悪く言えば来るなと言うこと。

(迷惑なら、迷惑って言えばいいのに)


 
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