企画小説

□No one but you
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No one but you





全ての授業が終了するチャイムが鳴り響く。
ずっと同じ体勢でいたため、大きく背伸びをすればポキポキと骨が音をたてた。

(…やっと、終わった)

何も書かれていない真っ白なノートと、教科書としてではなく枕としての役割をしていたそれをカバンの中にしまい込む。


本来ならこのまま体育館に、と言う所だが、今日は体育館整備やらなんやらがあるらしく中止に。
普段なら近くの公園にあるコートを使って自主練をするのだが、今日は違う。

日数で表すと約三ヶ月。
最後にデートしたときは夏真っ盛りの時期だった。
しかし今は冬本番に入ろうとしている11月。
こんなにもデートは愚か一緒に居ることすら出来ないなんておかしい。
そんなのは1ヶ月以上前の思いで。

早く、会いたい。
今の俺にはそれしかなかった。


防寒具をつける程ではないが、外はやはり寒い。
身を縮めながら待ち合わせ場所である正門に向かえば、手鏡で髪の毛を整える彼女の姿が目に入る。

(そんな事しなくても、十分可愛いのに…)

「〇〇っち!」


早く正面から顔を見たい。
早くあの小さな体を抱き締めたい。
早くあの可愛い唇にキスしたい。

色々な願望を喉の奥にしまい込んで名前を呼べば、一気に明るくなる〇〇っちの表情。

それはもう、蕾が満開に咲き開いた花のようで。

(やっぱり、可愛いっス)

そこまで出かかりそうになった言葉を呑み込んで。


「久しぶり、〇〇っち」

「久しぶりだね、涼君」


〇〇っちの頭を撫でれば、気持ちよさそうに目を細める。
うん、三ヶ月前と同じだ。

三ヶ月も会えなかったが、変わらない〇〇っちにへらりと口元が緩んだ。


 
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