トラファルガーロー 長編 Lily (現パロ)
□一粒の涙。
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「なあ。いつも店でピアノ弾いてたよな?」
「え?知ってるの?」
「ああ。まだ16だろ?なんで毎日、店に出てるんだ?そんなガリガリの体に何を抱えてんだ?」
「抱えてなんてないよ。
弟が明日も生きているためなんて立派な理由を掲げてたけど、本当はただ私が一人ぼっちになりたくなかっただけ」
「家族は?」
「弟だけ」
気づいたらローさんに抱きしめられていた
「ちゃんと飯食ってるのか?学校は?
お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。ご飯を食べなくても、学校に行かなくても今の生活を辛いと思ったことは一度もないよ。
辛いわけがないよ…」
「何があったのかちゃんと話せるか?」
ローさんは私の体を離してまたこの瞳で私を見つめている
少しずつ心が脱がされていく感じがした。
「家族が事故にあって亡くなってその事故で弟が意識不明の植物状態になってからもう少しで2年たつの。
だから先生が
『弟さんがいなくなると『淋しい』のはわかりますが、そろそろ生きられる可能性のある子供たちのためにドナーになることも考えて下さい。』って…
今日そう言われた時にわかったの。
私が2年間してきたことは一人になりたくない『淋しいから』だったんだって…
私は私が辛いわけないじゃない。
全部『自分のため』だったんだもの…
傲慢で我が儘でしょ?」
涙が一粒こぼれ落ちた。
どうして涙が出たのかわからない。
私は急いで一粒を拭いた
どんなに酔っても、どんなに淋しくてもこの2年間一度も泣いたことがなかった
涙を我慢していたらいつの間にか泣き方を忘れていたのに…
この人の側にいたらだめだ…
弱い自分が溢れ出てしまいそうになる
もう慣れた一人に戻ろう
「私そろそろ帰るね。これくらいでいい?」
私は財布を取りだし何枚かお札をテーブルの上に置き立ち上がったけれど足に力が入らずもう一度ソファーに座ってしまった…
「百合音今日は俺の家にこい」
「え?は?」
いきなりこの人は何を言いだすんだろう?
「フラフラで一人で家に帰れないだろ?それに一人で家にいたらまた酒を飲むだろ?これ以上飲んだら本当に体が壊れちまう。」
帰って一人で飲むことを気づかれてる…
「え?あ…いや…あの…でも…」
「はぁ…図星かちょっと待ってろ」