青の祓魔師<長編&短編>
□第1話「冬の雪」
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初めまして、クレイド・フォーカスです。
「ふあぁ…、ようやく終わったよ仕事…。ほんっと、三賢者ってば横暴なんだから!」
現在フランス支部最上階に位置する支部長室にて勤務中―――まぁそれも今終わったのだが。
「わ・・・、外雪降ってる…。」
僕は今まで自分が座っていたデスクの席から立ち上がり、
真後ろにある窓にふっと目を向ける。
窓の外にはちらほらと雪の積もっている場所が。この時期のフランスは寒くて困るね、
特に1月の雨は冷たくて濡れて帰ったら絶対風邪を引く自信がある。
「厚着しなきゃ…。」
そうハンガーラックのコートに手をかけた時。
――コンコン、と静かなノック音が部屋に響いた。
「どうぞ。」
「しっ、失礼します…!」
入ってきたのは20代前半の若い祓魔師。
そういえば最近フランス支部に入った子が居るって聞いた覚えがある。
履歴書やなんやら書類でも渡しに来たのかと思いながら僕は長い裾に手を通した。
「あっ、あの、支部入団の書類持ってきましたっ!」
ほーら当たった。
「ありがとう。そこの机に置いておいてくれるかな?」
「は、はい」
というか気になる所が何点かある。
まず第一になんで付添いの祓魔師が居ないのかということ、もう一つは
なんでそんなに僕に怯んでいるのかと言う事だ。
まぁ後者はなんとなくわかるとして…
「誰も付き添ってくれなかった?全く酷いね〜、新人さん一人で此処まで来させるなんて…。」
「あっ、いえ…。何故か皆さんに断られてしまって…。」
うわ酷い。それって明らかに僕に対しての嫌悪だよね、酷いわー泣くよ?泣いちゃうよ僕?
「へぇ…それに対して君はどう思ったのかな。」
「え…、あ。その、もっと怖い方かと…思って…。
その、先輩の中にはフォーカス卿を悪魔だって言う人もいたので…
よっぽど怖い人かと…。あの、失礼な態度とってしまったならすみませんっ。」
わー、なんて正直な子なんだろう。傷付くわー…。
「ううん、誰も間違ってないからいいよ。君も、僕には気を付けた方が良い。
悪魔はいつ人間を裏切るか分からないよ?」
僕はコートのボタンを止めながら自分の背中で謝る新人にそう告げた。
そう、誰も間違っていないんだ。
僕は魔神の息子で言葉の王。その上悪魔の王族である八候王の一人…。
悪魔というその言葉に間違いはない。
「で、でも…フォーカス卿は私の見る限り悪魔と呼ばれるような人では
ないように見えるのですが…?」
「……うーん、君は根本的に間違ってるね。
僕は君が思う人柄をを比喩した悪魔じゃない。1分の1スケール違わぬ"ホンモノ"の悪魔さ。
僕は人間に"悪魔と呼ばれる悪魔"なんだよ。」
僕はそう言いながら彼の肩にそっと手を伸ばす。
ゆっくりゆっくり、怯えないように。まだ形の成らない女性のような小さな肩に触れた。
「ぇ…っ…?」
「まだ分からないの?鈍感な子だね…、僕が直々に躾けてあげようか…?」
ずい、と顔を近づけ耳元で甘く低く囁く。
「ぁ……///」
恐怖と誘惑に震える体、人間はこういう瞬間が一番美しい。
途端に"食べたい"という衝動が沸いてくる
―――が。
「なーんてね、冗談だよ。」
僕はその肩にもう一度ポン、と軽く手を当て明るい声でそう言う。
「え?」
「これから頑張ってね〜、応援してるよ。」
――バタン
きっとあの新人の子は今頃部屋の中で腰を抜かしている事だろう。
それも見たかったけど僕は早く家に帰って暖まりたいのだ。
あぁ…冬ってのは本当に寒いね。