日常編

□標的8
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「あっけなかったな」


と雲雀はあまり興味なさそうにつぶやきながら、さっき倒した二人を見下ろす。
あれから戦闘になったが獄寺も山本も直ぐにやられてしまった。
いな、戦闘ともいえない、ただ二人とも一方的にやられたが正しい。




「…まだ、誰か居るのかい?」



この二人以外にも誰かがいる事に気づき雲雀はその気配がする方へ向かう。するとそこには今だに眠る四季の姿があった。
雲雀はその姿をじーっと見つめ、何を思ったのか彼女の頬をそっと撫でる。触った直後は余りの冷たさに驚いたがそれも、すぐに気になることはなくなる。




「…まるで、眠り姫だ」




触れたと同時に雲雀の口からとてつもなくメルヘンなセリフが飛びたしてきた。
もともと非常に美人な彼女がそっと目を閉じているその姿はとても絵になる。キラキラと輝く蜂蜜色の髪を散りばめ、色白いその肌はいっそ彼女の儚さを引き立たせていた。
まぁ、どちらかといえばその姿は眠り姫というよりも死人のようにみえると思うのだが。



「…キスでもすれば目覚めるのかな」



さっきから本当に偽物じゃないかと疑うようなセリフだったが、彼は正真正銘本物の雲雀恭弥である。群れる草食動物などは嫌う割りには小動物のような可愛ものは案外好きなのがこの委員長なのだ。こんなことを知る者などあの副委員長である草壁哲也でも知らないのだろう。



「…でも、僕は生憎王子様でも無いしね。それに小動物でも僕は自分の敷地(テリトリー)に勝手に入られるのは嫌なんだ」



メルヘンな思考を持っているがやはり鬼の風紀委員長。やることはえげつない。
さっきまで頬を撫でていた雲雀のその手にはすでにトンファーが握られている。


ーーそしてそのまま上に振りかざし、四季に向かってトンファーは降ろされた。




ーーーーはずだった。





『…最悪な目覚めだ』
「!!」




そう、本来なら四季に当たるはずだっただったそのトンファーは止められたのだ。眠っている筈の彼女自身によって。
予想もしなかった出来事に雲雀はその細く鋭い目を見開いたのだった。






ーーーーーーーーーーーー




殺気にあてられ目が覚めたと思えば黒髪の男に殴られかけた。
隠し持っているナイフを取り出して打撃を防御する。
…なんつー目覚めだ。過去最悪だな。



『…最悪な目覚めだ』
「!!」



止められるとは思ってなかったのか黒髪の男は目を見開いて驚いていた。オレは気にせずくあっと欠伸をしながら起き上がる。
その時にふっと獄寺と山本が倒れているのが見えた。
はぁ……やられたのか。リボーンこれが狙いだったな…。



「ねぇ…君、寝てたんじゃ無かったの」
『寝てたさグッスリとな。でも、それだけの殺気を当てられば起きる』



ムッと明らかに機嫌が悪そうな黒髪の男の質問にめんどくさいと思いながらも答える。



「ふぅん…ただの小動物かなと思ったんだけど君…とんでもないね」
『…』



とても楽しそうな黒髪の男に対してオレはナイフをクルクルと回す。
ついでにどうやってこの状況を打破するかも考える。
というか、小動物ってなんだ…



「…君、それ校則違反だよ」
『知ってる。だけど、これは手放せないんだ。』



ナイフを見た途端そいつは楽しそうな顔からまた不機嫌な顏に戻る。
まぁ、校則違反前に銃刀法違反なんだがな。と思いながらもまた殺気を強めてきた男に対してナイフを構え直す。



「…咬み殺すっ!!」



相手もオレの殺気に気づいたのかトンファーを構えて攻撃をしかけてきた。
そのまま、右から来る攻撃を防ぐ。次は左からの攻撃を防ぐ。そうして何回かの攻防戦が続く。


あぁ、楽しいなぁ…!
こいつとならギリギリの所まで殺れそうだっ!



『ーーいいよ、お前は最高だ!』
「君こそ本当に面白いね」



一度後ろに下がりオレと黒髪の男は楽しげに笑い合う。めんどくさいことは嫌いだ。だけどーーあぁ、本当にゾクゾクする!
久しぶりだここまでオレと殺りあえるやつは…


ーーだが、まだオレの方が強いっ!




「そこまでだ!…四季おまえ、最近体調が戻ったばっかりだろ。それ以上はやめておけ」



決着をつけようとしたそのとき、窓の外からリボーンの声が聞こえオレと黒髪の男はそちらに視線をむける。
…やめておけって…こうなるように仕向けたのはお前だろ。と思ったがリボーンはそんなことを気にせずに男に話しかける。



「それにしてもやっぱつえーなおまえ。」
「…君が何者かは知らないけど。僕今彼女と楽しんでる途中なんだ。だから、邪魔しないでくれる?」



そう言って雲雀はリボーンに向かって攻撃をする。
が、リボーンは軽々しくその攻撃を十手で受け止めた。雲雀はそんなリボーンに興味を持ったのかまた楽しげな笑みを零した。

それの背後でオレは未だにのびている獄寺と山本を回収する。
…めんどくさいし、重いんだが




「おひらきだぞ。」




リボーンはオレの事など御構い無しに、何処から出したのか煙幕を取り出してそれを投げたのだった。
雲雀が目眩ましさせられている間にオレは回収した獄寺、山本をリボーンに渡す。そしてそのまま窓から飛び降りた。





ーー『…じゃあな、おまえとはもう一度会えることを楽しみにしてる』
「!!」















標的8
雲雀恭弥
(あの子と赤ん坊また会いたいな。)







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