語物語

□壹話
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扉さん。
黄瀬くんを覚えてますか?
…え?あ、はい。そうですデルモ(笑)でシャララな黄瀬涼太くんのことです。それで合ってますよ。

…いえ、昔話に花を咲かせたいが為にあなたをこんな時間帯にマジバなに呼んだわけじゃありませんよ。
第一、昔話をしたとしてもあまり黄瀬くんと関わりの無かった貴方に彼の話はしません。
…と言うわけなので昔話ではないです。
だから、今から説明します。
何故僕が大して関わりのなかった扉さんに、黄瀬くんの話をしようとしたのかを。




りょうたムジナ 其の壹



最近僕たち誠凛と海常高校とで練習試合をしたんです。
あ、海常高校と言うのは黄瀬くんが通っている学校です。
その試合はとても接戦していて、とても良い試合でした。
…でも、後半戦になってから黄瀬くんが自分の特技を使ってから調子がおかしくなったんです。扉さん、多分黄瀬くんの特技について知らないと思うので簡潔に説明しますけど、彼の特技は人の技をコピーするという特技の持ち主なんですけど。

…え?あ、いえ。特技を使って体調が悪くなったとか、どこか怪我したとかそんなことじゃないんです。
とても言葉にするのが難しいんですけど…。
黄瀬くん、試合中に味方から声をかけられた時に『反応』しなかったんです。試合に集中してて周りの声が聞こえて無かったとかそんなんでもないんですよ。
…彼、自分の『名前』に反応しなかったんです。十回ぐらい彼の名前を呼んでやっと『反応』したんです。

で、僕その試合の後彼の先輩の笠松さんって人に話を聞いたんですけど、黄瀬くん最近試合中に名前を呼ばれて『反応』しないことが多いらしいんです。
最初は少し反応しない程度だったらしいんですけど、段々と悪化してきているみたいで…。
扉さん。このことについてどう思います?



ーーーーーーーーー


「…えっと。どう思うって言われてもね……。それは、耳鼻科に行ったらいいんじゃないのかな?」
「だからそんなんじゃないんですって。黄瀬くん、風邪なんてひいて無かったですし…。しかもあの時彼の『反応』しない『反応』に、僕を襲ったモノと同じ感覚がしたんです。」
「…つまり君は結論から言うと、怪異のせいって言いたいんだよね?」
「はい…」


そうか細い声を出して黒子くんは顔に陰を落とした。


「んー…目星はいくつかつくんだけどね。それだけじゃ、どんな怪異なのかわからないよ。」
「まぁ、そうですよね…」


うっ…そんな捨てられた子犬のような顔されたら私が悪いことしてるみたいになるよ……
はぁ…仕方がないなぁ


「わかったよテツヤくん。
近いうちにでも黄瀬くんがいる海常高校に行ってみるよ。
だから、」


“今日は家に帰ってもいいかな?”と私はマジバにある時計を指差してそうテツヤくんにつぶやいた。

時刻は10時をすでに回っていた。



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