華の乱
□そばにいて
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「進ちゃん?」
「んー?何?」
寮までの帰り道、手を繋ぎながら恋人の進ちゃんに話しかける。
日はとうに暮れ、周りは人の姿も少ない。
「んふふ、なんでもない」
「え、何それ(笑)」
「なんでもないったら…」
肩に頭を寄せて握っていた手を更に握りしめる。
「ここに進ちゃんが居てるだけで嬉しいの」
「そんなに僕って稀少価値ある?」
「みんなには無くていいの。私にだけあれば良いの」
どうかこのまま側にいて欲しい。
必ず来る朝も、綺麗な星空の下でも、この暖かな手のひらが包んでくれるなら私は幸せ。
「そっか」
「だからね、遠くに離れそうなときは、見つけだしてね?」
「どしたの?急に」
この広い世界で、巡り会えたのは奇跡で、離れることはないとは限らない世の中だから。
だから寂しく思う。いつか別れが来るのではないか。そんなことは嫌なんだ!
そんな思いが言葉に現れるとどうも甘えた感じになる。
「人って儚いんだよ?家畜同様にね。そんな中で夢を叶えられる人は一握りだよ。」
「うん」
「私は進ちゃんの夢、応援してる。だから、側にいさせて?」
「ふはは。可愛いこと言うねえ、さっきから」
そう言って進ちゃんはギュッと抱きしめてくれた。暖かい体温に、それだけで泣きそうになる。
「あのね、僕にとって夢は大事なの。」
「うん」
「獣医になるために越えなきゃならないことがたくさんある。けど、玲鳴無しでは越えられないこと、気づいてないの?」
「え?」
抱きしめられたまま、上を向くと、進ちゃんの優しい顔が上から降ってきた。
「永遠なんて先のことは解らないし約束できないけど、今は離れたくないし、この先も離れる気無いよ。何を思って不安にさせたか解らないけど、玲鳴のこと、結構真剣に考えてるから。そりゃ、まだ学生だし若いし学ぶことがたくさんあって遠回りするかもしれないけど、玲鳴。そばにいて?」
「…………………、そばにいる……………」
このままどうか側で 私を見つめてね
星が照らす夜も 静かな朝も
暖かな目で 心を灯して
そしてどんなに どんなに遠くに行っても
見つけだして
このままどうか側で 同じ夢見たいの
曇り空でも良いよ 激しい雨でも
変わらない思いを誓うよ
そばにいて…
次の日、常盤によって生チュー写真が貼られたのは言うまでもない。