ツェペリの金うさぎ
□プロローグ
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【ヴェネチア】
観光地としても有名なイタリアの名所
19◆×年●月△日
今日の天気は雨
この日はずっと雨が降り続いていた
いくら観光名所の美しいヴェネチアと言っても町を歩く人はほとんどいない
「くそっ、ズボンの裾が汚れちまったな」
緑の傘をさして人通りの少なくなった街を歩く両目の下に特徴的な痣をもった金髪のイタリア人の男が独り言のように呟く
男は、早足で歩いているために何度も水たまりの水をはねてしまいズボンの裾にかかる泥水に苛立っていた
「ジョジョのやつめ、また何の連絡もせずにいきなり遊びにきやがって。あれだけ口酸っぱく来るときは連絡しろと言ってやったのにスカタンが……チッ、肩も濡れたぜ」
男ーーシーザー・A・ツェペリはつい舌打ちをしてしまった。
雨の日にわざわざ彼が出かけたのには訳がある。親友のジョセフ・ジョースターがまたなんの連絡もよこさずに彼のいるイタリアへ遊びにきたのだ。
月一のペースで遊びに来ていたと思ったら、急に来て一週間も泊まったりとジョセフの性格がそのままで出しまっているような、自由なスケジュールでシーザーのいるイタリアへやってくる。毎回待ち合わせ場所に迎えに行くたびに、ジョセフへ罵声を浴びせるのがお決まりとなってしまっていた。
お気楽な親友のせいで怒りが頂点に達しそうだ。
ズボンが汚れたのも、肩が濡れたのも全てジョセフが悪いような気がしてきて(と言うか、全部あいつのせいだが!)今回ばかりはあの能天気な顔に一発お見舞いしてやろうと決意する。
そして、待ち合わせ場所に続く路地へ入った時だった。
いつもなら、野良猫がいる路地は水たまりがあるだけで何もない……そう思っていたが
「…ん」
視界の端に映った人一人入れそうな建物のすきまの、ナニカに気づいて足を止めた。
「コ、コニーッリョ?」
透けるようなプラチナブロンドの毛並みのウサギのが真っ赤な目でシーザーを凝視していた。
ぬいぐるみかと思ってよくよく見てみると、パチリと瞬きをしたので生きているということがわかる。
どこかから、脱走したのかと思いシーザーが捕まえようと手をだしたが、すり抜けるようによけられてさらに路地の奥へ行ってしまった。
そしてなぜか、止まってこちらを向いてまた凝視している。
「ついてこいってことなのか…?」
バカバカしいかもしれないがウサギの赤い瞳が何かを訴えているように見えたシーザーは、ウサギの後を付いていくことにした。
(いつもなら、待ち合わせには間に合うようにするが、今回ぐらいはいいだろう……)