青春謳歌

□覚悟と新しい目標A
1ページ/1ページ


虹村side

オレとちびの1on1が始まって十分分程経った。
ちびのプレイは女子にしてはあまり見ないジャンプを利用した技が多かった。
清川がなにかしたのだろう、アイツはそういうヤツだ。
スコアボードを少し見れば6―5の文字。
何故だかオレがおされている。

「(だったらこれで……どうだ!)」

オレはダンクを決めようとした。
そこからが驚きだった。
なんとちびがダンクを止めに来たである。
ちびとオレじゃ身長差がありすぎるし体力も違う。
なのに止めに来た。

「……負けるのは…!絶対に嫌です…!だから……!」

あなたのシュートを止める!っと言う言葉と同時にちびはボールを取った。
その後ドリブルでスリーを入れられたが一瞬過ぎて止められなかった。
近くで聞こえたブザーの音は何故か遠く感じた。

虹村side終了





…………

「はっ……はぁっ。かっ勝ちました……!」

男バス主将に美歌ちゃんは勝った。
普通ならありえないことだろう。
でも得点板の9―5を見るからに最後の美歌ちゃんのスリーはブザービートだったのだろう。

「………美歌が覚醒するまであと少しみたいね……。」

清川先輩のニヤリと笑うと美歌ちゃんにタオルを渡しに行く。

「お疲れ様、美歌。よく頑張ったわね。」

「はっ………はい!!」

美歌ちゃんが清川先輩にはにかむ。清川先輩はほほ笑み返しながら虹村先輩に目を向けた。

「……女子に負けるだなんてカッコ悪いわね、虹村。」

「………うっせぇ……。」

「あっそ。じゃ、帰るわよ。二人とも。」

俯いてる虹村先輩に目も向けずスタスタと去っていく清川先輩を私と美歌ちゃんは急いで追いかけた。





…………………

第四体育館までの帰り道。
清川先輩は前方を歩きながら言った。

敗者に慰めの言葉をかけても虚しくなるだけよ、と。

美歌ちゃんはキョトンとしていたが私にはなんとなくその意味がわかった。

清川先輩は虹村先輩にもっと強くなって欲しいから、もっと頑張って欲しいからあえて甘えさせないのだと。
ふっと笑う私に有川さん?と美歌ちゃんが首を傾げて見てきた。だから私は内緒、とだけ言った。




そしてその日の部活で新しい一軍での他校との練習試合が清川先輩から告げられた。

「またミーティングで詳しく言うけど相手高はここらじゃちょっとなのしれてる中学よ。貴女達七人と私、マネージャーは灯華だけでいいかしらね?頑張りましょう!」

どこまでも自分勝手な人だ。
私は改めてそう思った。


でも、勝つと信じてるからこそわざわざなのしれてるような中学を選んだのかと同時に思った。





………………

「では、これから一軍だけのミーティングを始めるわ。」

部活後の部室。私と美歌ちゃん、瀬川さん、間宮さん、八神さん、古川さんに雪原さんが集められた。

「まず今回のスターティングメンバーは貴方達と私になったからよろしくね。」

にっこり笑いながら言い放った後、今度は真面目な顔になる。

「そこで忘れないで欲しいのが帝光の理念よ。百戦百勝……負ければ二軍に降格よ。だからそれだけは肝に銘じておきなさい。」

W百戦百勝W それは帝光中学校バスケットボール部絶対の理念である。
負けを許されない帝光。でもそれはきっと強いからだ、と私は自分に言い聞かせた。

「相手校はIHでの優勝経験がある強豪校よ。…頑張りましょうね♪」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ