有言実行

□挑戦の始まり
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帝光中学校バスケットボール部。部員数百を超える超強豪校。その世代に輝かしい記録を残した世代はキセキの世代と呼ばれている、しかしキセキの世代には奇妙な噂があった。誰も知らない、試合記録もないにも関わらず天才五人が一目置いていた選手、幻のシックスマンがいると。

そして、そのキセキの世代をも勝ったことがない帝光の光と呼ばれた少女達がいると。










「……ここが…誠凛高校……。」

オレンジの髪を靡かせながら少女、間宮沙耶は校門前に佇んでいた。

「!!沙耶…さん!?」

後ろを振り向けば見たことのある水色の髪。

「……久しぶりなの、黒君。」

少女は静かに微笑むのだった。






「沙耶さんはどうして誠凛高校に?」

「……内緒なの。」

「えっ。」

「……まだ内緒なの。」

「…そうですか。」

「それより…黒君。部活は」

「バスケです。」

「私もマネージャーして入るの……宜しくなの。」

「え、さっ沙耶さ「すいません、男子バスケットボール部に入りたいんですけど。」……。」

私はそこにいたマネージャーらしき人に声をかける。

「あ、マネージャー希望?」

「はい。」

「じゃあ入部届け書いて。」

沙耶はスラスラと書いて渡す。

「えーっと……帝光出身…てことはキセキの世代…ではないか。女の子だし。
………ん?てことはまさか……。」

「「帝光の光!?」」

「の一人です。」

では、失礼しました。と頭を下げた後沙耶は人混みをかき分けながら校舎に入っていった。

「帝光の光か……。」

日向がそんなことを呟くと同じ2年の小金井が戻ってきた。

「バスケ部ってのはここか?」

かなり大きい男子生徒に担がれながら。

「う、うん……。」

リコが頷けば男子生徒は座る。

「入りてぇんだけど。」

「えっ!?」

「バスケ部。」

「あぁ、歓迎!大歓迎!!ちょっと待って。」

突然の言葉にビクリとしながらもリコはお茶を出す。

「知ってるとは思うけどここは去年出来たばっか新設校なの。上も2年生だけだし君みたいに体格よければすぐ「いいよ、そういうの。入部届け書いたら行く。」…。」

差し出された紙にペンを走らせる。

「あれ、志望動機はなし。」

「日本のバスケなんてどこでやったって一緒だろ。」

そう言って青年、火神大我は紙コップを握り潰し後ろ向きでゴミ箱に入れた。そして去っていった。

「……すげぇ奴だな。」

「えぇ……。」

「あ、おい。ひとつ集め忘れてるぞ。入部届け。」

「あ、うん!えっと…黒子テツヤ……帝光出身!?」

リコの言葉に日向が反応する。

「帝光ってあの……!?」

「そう!しかも今年一年ってことは…キセキの世代!アメリカ帰りにキセキの世代に帝光の光……今年の一年…ヤバイ!!」











「よし!1年生全員揃ったわね!」

そして次の日私達入部希望者は体育館に集められた。隣の男子二人がマネージャーと思われる人を可愛いと行っていたところ眼鏡を掛けた先輩に後ろからげんこつをくらっていた。
痛そうだ。あの人マネージャーじゃないのかな……?

「だアホ、違うよ。」

「監督の相田リコ!よろしく!」

えぇー!?と言う声が体育館に響く。
皆後ろのおじいちゃん、竹田先生が監督かと思ってたらしいが顧問の先生らしい。

「よし、自己紹介も済んだところでお前達…シャツを脱げ!」

えぇー!?と言う声がまたも体育館に響いた。え、私どうすればいいんだろう。
そんなこと思っていれば日向先輩が来て間宮も一応受けるか?と聞いてきた。それに私は頷いた。なんだか火神君の前で相田先輩は立ち止まっていたが日向輩に呼び止められると私の前に来た。

「沙耶ちゃんは…この中で!」

突然出された簡単更衣室に私は少し退く。

「はい、じゃ脱いで。」

私が中でシャツを脱げば監督さんは不思議そうな顔をした。

「…あなた女の子よね……?」

「?はい。」

「……着ていいわよ!」

私はシャツを着て簡単更衣室を出た。

「監督、間宮で最後だよな。」

「えーっと、あれ?黒子君いるー?……今日は休みみたいね。いいよー!練習入っ「あの。黒子は僕です。」え……うわああああああああああ!?」

いきなり現れた黒子君に監督さんが声を上げる。え、最初からいなかっけ?

「と、とりあえずシャツ脱いで。」

「え、はい。」

黒子君がシャツを脱ぐと監督が驚いた表情を浮かべる。
確かに黒子君はそう簡単には見えない。
でも、W私達Wには黒子君がいつだって普通の人間のように見えていた。





リコside

リコは帰りのバスに揺られ黒子と沙耶のことについて考え込んでいた。

彼は一体何者なの?能力値が低すぎる。それにほぼ限界値だなんて。とても強豪校でレギュラーを取れるような資質じゃない。
彼女…沙耶ちゃんもよ。あの小さな体に男子に負けないくらいの能力値がある。強豪校のトップとは言われていたから凄いとは思ってたけどここまでとはね…。一体どんな練習をすればあんな体格に………。






「あ?お前、確かマネージャーの。」

「沙耶さん。」

夜、ストバスでバスケをしていると上から低い声が2つ聞こえ上を向けば火神君と黒くんがいた。

「……こんばんはなの火神君、黒君。」

「バスケをしてたんですか?」

私は頷く。

「……お前、バスケやってるのか?」

「中学の時にやってたの。」

「じゃあ、お前バスケできんのか!今度一緒にやろーぜ!」

「わかったの。」

その後、火神君と黒君が1on1を始め、結果は火神君の圧勝。
……まぁ、当然だと思う。
火神君は呆れながらバスケは向いていないと黒君に言った。
黒君は嫌です。とだけ言った。

「はぁ!?」

「落ち着いて欲しいの、火神君。」

喧嘩腰の火神君を私は宥め黒君はこう続けた。

「君と僕は違います。僕は…影だ。」

何言ってんだこいつという目で見ている火神君に対し私はただ無表情で黒君を見ていた。






その日の放課後は雨が降っており外周の代わりに1年対2年で勝負しようと相田先輩が言った。

「(火神君があの中で圧倒的に強いからダブルチームを組まれたりしたら終りなの…。)」

まぁ……それ彼”がいれば何とかなるんだろうけど。

そんなことを考えていれば相田先輩の笛の合図とともに1年対2年の試合が始まった。



やっぱり火神君はすごい。
試合を見て我ながらそう思う。
さすがの先輩達もおされており点差は開く……はずだった。
火神君の動きが鈍くなる。それは先輩二人のダブルチームが彼についたから。

「(黒君……。)」

黒君を見ればこちらを見ていたのか目が合う。私は彼が“アレ”をやろうとしていることがわかり静かに頷いた。
すると黒君は一年生の一人に声をかけボールを回してもらった。
その瞬間ボールがいつの間にかゴールに入っていた。

「!?」

相田先輩や先輩達はそれに驚いている。

「……何が起きたの…?」

「……相田先輩は“幻のシックスマン”って知ってますか?」

「え…?…まさか」

「はい。それが彼です。」

「じゃあ…あれが、ミスディレクション…。」

ミスディレクション。影の薄さを利用してパスの中継役になる技である。
黒君はこの技のおかげで帝光男子バスケ部一軍に入れたらしい。
その時はまだ黒君と会ってなかったから私も詳しくはわからない。

その後も黒君と火神君の活躍でどんどん点を入れていき先輩達に勝った。









「またあなたですか……。」

「火神君。こんばんはなの。」

「!?…間宮はともかくまたお前か。」

その日の帰り、黒君に誘われてマジバでチョコシェイクを啜っていると大量のハンバーガーをトレーに乗せた火神君が来た。

「火神君…すごい量なの…。」

「そーか?普通だと思うけど。………ほらよ。」

黒君の目の前に置かれたのはひとつのハンバーガー。

「バスケ弱い奴は興味はねーけどそれ一個分くらいは認めてやるよ。」

「…どうも。」

「間宮も食うか?」

「じゃあ食べるの。」

少しだけ緩和された黒君と火神君に私は二人にバレないように笑った。






「キセキの世代っつーのはどれくらい強えんだよ。俺が挑んだらどうなる。」

「瞬殺されます。」

「勝てないと思うの。」

「なっ!?」

マジバの帰り道、火神君がそんなことを聞いてきた。
私達のはっきりした意見に不満気な顔をする火神君に私は口を開いた。

「彼らは十年に一度の天才と呼ばれた人達なの。そんな簡単に勝てるわけないの。」

「そうですよ。ただでさえ最強の五人がそれぞれ違う強豪校に進学したんです。そのうちの一つが……必ず頂点に立ちます。」

深刻そうに黒君が言うと火神君はいきなり笑い出した。

「いいねぇそういうの。…決めた!そいつら全員ぶっ倒して日本一になってやる!」

「無理です。」

「おいっ!」

「今の君のじゃきっと彼らの足元にも及ばない。…だから僕めました。」

「っ!黒く」

「“影”として僕は君を日本一にする。」

迷いもせず言いきった黒君。
私はただ呆然としていた。

「勝手にしろ。」

「頑張ります。」

微笑を浮かべながらいう二人。
火神君なら黒君の新しい光になれるかもしれない。
憶測だけど私はそう思った。

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