海賊長編1/非日常
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「すげェ早業!!!」
「スーパーだろ!!」
「スーパーだな!!」
男部屋におれ専用の箱型のハンモックを作ってもらった。フランキーはどこから持ってきたのか分からない木と、どこから出したのか追求したくないハンマーやら釘やらてあっという間に作り上げた。何やら変なポーズを取っているが、それは全面スルーで通したい。
「あれ?サンジは?」
「キッチンだろうよ」
「ふーん、じゃ、行ってきまーす」
サンジともっと話したくて、おれはフランキーにお礼を言ってキッチンへと向かった。
――…
「サンジー」
「あ?…タクミか、どうした水か?」
「んや、お喋りしに来た」
「さっさと寝ろよ」
「えーもっと喋ろうよー」
「何をだよ」
良くあることだ。夢の中で寝たら次、目が覚めたときは現実っていうパターン。でも、可能性としてはそればかりじゃない。夢の中で夢を見ることだってある。だから、また、
「……どうした、」
「え?」
ぼんやりと考えていると、何となく心配そうに、サンジがおれを見ていた。そんなサンジを見て、おれは笑顔を浮かべると「何もない!」と言った。サンジは「そうか、」と言うと、またキッチン周りの掃除をし始めた。
「眠そうだな、さっさと寝ろ!」
「んー、じゃあおやすみー!」
「あァ、おやすみ」
サンジは、おれに背中を見せたまま、軽く手を挙げただけだった。ハンモックに潜り込み、天井を見つめる。明日は颯斗に今日見た夢を自慢しよう。んでもって、漫画読もう!このまま寝て、また夢見てたらおもしろいな。そうだったらいいな、と思いながら眠りに落ちていった。
――――…
「起きろ!!」
「わっ!!何、遅刻!?!?」
「いつまで寝てんだよ、みんな揃ってんぞ」
「あれ?サンジだ」
「寝ぼけてんな」
望み通り夢の夢を見ているらしい。ほんと都合いい!ラッキー気分でダイニングに向かうとみんな食卓についていた。
「みんなおはよー」
「あんたいつまで寝てんのよ!」
「えーまだ眠いよ」
「おらタクミ!さっさと座れ!料理が運べねェだろうが!」
「はいはーい」
気分よくさっさと座ると、目の前にコトンと料理が置かれた。
「そういえばタクミはどこ出身なの?」
朝にしては豪華すぎる朝食をガツガツと食べていると、ナミがコーヒーを啜[すす]りながら聞いてきた。
「日本」
日本人離れしたみんなの出身地はどこだろう。…あ、漫画の登場人物に出身地なんてわかんないか。髪の色が鮮やか過ぎる!
「ニホン…?ロビン、聞いたことある?」
「無いわね…」
「ロビンちゃんでも知らねェとなると…」
お、いい反応!何て言ったって、おれは不思議人間だからな!
「どこだっていいじゃねェか!だってこいつ不思議人間なんだろ!」
ルフィがそう言うと、みんな腑に落ちない顔を見せたが、「そうね、」とあっさり引き下がった。鶴の一声ってこういうことなんだろうな。そんな中、ゾロは一層、視線に警戒の色を強めた。
―――…
「しっかし、広いなァ…」
どこまでも広がる青い空と海に思わず感嘆の息を零した。何年も海に行っていなかったため、久しぶりに感じる潮風が心地好かった。都会の喧騒から掛け離れた静かな空間もとても気持ちが良かった。しばらく海を眺めていると、タバコの匂いがした。
「あ、サンジ」
「何してんだ?」
風に靡[なび]く金髪はキラキラとしていてとても綺麗だ。
「綺麗だなァって」
「これからは嫌ってくらい見れるぞ」
「ははっ、そうだろうな!」
学校生活も嫌いじゃない。颯斗がいて友達がいて授業受けて部活して。たまにある行事とか、部活帰りの風景とか、全部好きだ。でも、こういう風にゆっくりとのんびりと過ごすのもとてもいい。
隣で遠くの海を見ているサンジを見て、何故か心臓が痛くなった。息が少し苦しくて、でもなんとなく落ち着ける。良く分からない感情におれは首を傾げた。
「ま、いっかー」
突然気の抜ける声を出したおれに、サンジは「変な奴、」と呟いて、また、煙を吐き出した。