海賊長編1/非日常
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「敵襲だァ!!!!」
サンジとほのぼのとしていると、ウソップの大声が聞こえた。敵襲って何だか海賊っぽい
「タクミ、戦えんのか?」
「自慢じゃねェけど、喧嘩は弱い!」
「…ほんと自慢じゃねェな…」
深いため息をつかれ、おれは開き直って笑ってみせた。
「おれは早くレディを助けに行かなくては…!!」
ナミすわぁ〜ん!ロビンちゅわぁ〜ん!待っててねぇ〜!!
と駆け抜けていくサンジを見て、胸がぎゅっと痛くなった。
――…
「あ、こんな所にいたの」
しばらく観戦していると、後ろからナミの声がした。
「おれ弱いからここから見とこうと思って」
「……やっぱり、弱いのね……でも関係ないわ!敵船に行ってお宝奪って来なさい!」
「はァ!?やだよ!!」
「あんた、見た感じ無一文だし、この船に来てから何にも役に立つことしてないじゃない」
にこりと笑ったナミは悪魔のようで、おれは渋々立ち上がった。
「ナミも一緒行くだろう?」
「何言ってんのよ!さっさと行ってきなさい!!」
「……はーい」
理不尽だと思いながらも敵船に乗り込んだ。見た感じあまり人はいないみたいだ。ド素人のおれがあっさり船に乗り込めた。取り敢えず船内に入り、宛てもなく歩く。そこまで広いわけではないため、敵にばったり遭遇したら逃げる場所がない。作戦でも考えないと。武器も持ってないし、格闘技ができるわけでもないし。部活はバスケ部だったから、ボールがあれば敵に当てるぐらいなら出来るのになァ
んー…と唸っていると、部屋のドアが開いた。
「げっ、」
「侵入者だ!!」
やっばいやばい!作戦何も考えてないのに!扉の奥は広そうな部屋だった。後ろを振り返ると、目の前の男の大声を聞いた仲間がわらわらと集まってきている。仕方ない!!
おれは目の前の男の脇を潜り抜けると、部屋に入り、使えそうな物がないか見渡した。転がっているのは日用雑貨で使えそうな物はほとんどない。これはあのトラよりやばい!!
「うりゃ!」
床に転がっている時計やらを頭目掛けて思い切り投げると、見事ヒットした。
「よしゃ!これがバスケ部の威力だ!ただのモテ競技じゃねェんだぞ!!」
「くそっ……生意気な…!」
だが、所詮丸腰のおれと、いかにも野蛮そうな男たちとは格が違う。
「あれ、ヤバい感じ?」
ナミのバカヤロー!!こんな危ない目に合うなら来なきゃよかったよ!言っとくけど、かなり怖いぞ!!
「小僧が…!死ねェ!!!」
敵が剣を振り上げた。おれはどうしようも出来ずに、ただ目を瞑って攻撃に備えた。
「………あれ?」
いつまで経っても痛みが来ない。その変わりに男たちの苦しむ声が聞こえてきた。
「一人で何やってんだよ、戦えねェくせに」
聞き慣れた声が聞こえたため、目を開けて勢いよく頭をあげた。
「…ほら、」
顔をしかめたサンジの差し出された手を握り、ふらふらと立ち上がる。
「……だって、ナミが……」
ガラにもなく、安心して泣きそうになったおれを見て、サンジはおれの頭をガシガシと乱暴に撫でた。
「ナミさんお目当てのお宝はもう見つけたから帰るぞ」
「……うん、助けてくれてありがとう…」
サンジは、俯いたおれの背中を軽く押して、スタスタと歩きはじめた。その後ろに慌てて着いていくと、いつもよりも歩くペースが遅い事に気がついて、思わず笑みを零した。