海賊長編1/非日常

□17
1ページ/1ページ



「…帰ってきてから元気ねェな、どうした?」

いつも通りにしていたつもりだったため、思わず目を見開いた。

「…んや、気のせいじゃない?」

ニッと笑って見せると、サンジの眉間に寄ったシワは、一層深く刻まれた。

「……じゃあさ、今日はキッチンにいていい?」

「…いいけどよ…」

腑に落ちないという表情をするサンジにおれは笑ってみせた。

――…

いつも通りの賑やかな夕食を済ませた後、おれはそのままキッチンに残り、後片付けをするサンジを眺めていた。

「そんなにジロジロ見んじゃねェよ、」

「んー」

チラッとおれを見て、一つため息をつくと、また眉間にシワを寄せた。

「本当にどうしたんだよ。何かおかしいぞ?」

「そんなことないよー。あ、サンジの片付け手伝っていい?」

「いいけどよ…」

「やった!」

怪訝な表情を浮かべたサンジの隣に立って皿を拭く。時折触れる指に、一々心臓が跳ねる。

チラリと盗み見をしたサンジの横顔は淡々としていて、おれに望みがないことは一目瞭然だった。ズキズキと痛む胸に気づかないフリをして、自分の作業に専念した。

「…なァサンジ?」

「ん?」

「おれ、サンジに出会えてよかったって思う」

話の流れがよくわからないサンジは眉を潜めておれを見た

「ありがとな」

サンジの目をしっかり見て。想いをしっかり込めて。

「…突然、意味わかんねェ」

「ははは、気にすんな」

泡がついた手を綺麗に拭き、サンジを振り返った。そして、最高の笑顔を浮かべた。

「じゃあ、おやすみ!」

「あァ、おやすみ」


キッチンを出て、空を見上げた。そこには満点の星空がどこまでも広がっていた。


既にイビキが聞こえる男部屋で、フランキーに作ってもらったハンモックに潜り込んだ。明日の朝、早く起きてあの少年に会いに行こう。みんなが起きてしまう前に。





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ