海賊長編1/非日常
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「…帰ってきてから元気ねェな、どうした?」
いつも通りにしていたつもりだったため、思わず目を見開いた。
「…んや、気のせいじゃない?」
ニッと笑って見せると、サンジの眉間に寄ったシワは、一層深く刻まれた。
「……じゃあさ、今日はキッチンにいていい?」
「…いいけどよ…」
腑に落ちないという表情をするサンジにおれは笑ってみせた。
――…
いつも通りの賑やかな夕食を済ませた後、おれはそのままキッチンに残り、後片付けをするサンジを眺めていた。
「そんなにジロジロ見んじゃねェよ、」
「んー」
チラッとおれを見て、一つため息をつくと、また眉間にシワを寄せた。
「本当にどうしたんだよ。何かおかしいぞ?」
「そんなことないよー。あ、サンジの片付け手伝っていい?」
「いいけどよ…」
「やった!」
怪訝な表情を浮かべたサンジの隣に立って皿を拭く。時折触れる指に、一々心臓が跳ねる。
チラリと盗み見をしたサンジの横顔は淡々としていて、おれに望みがないことは一目瞭然だった。ズキズキと痛む胸に気づかないフリをして、自分の作業に専念した。
「…なァサンジ?」
「ん?」
「おれ、サンジに出会えてよかったって思う」
話の流れがよくわからないサンジは眉を潜めておれを見た
「ありがとな」
サンジの目をしっかり見て。想いをしっかり込めて。
「…突然、意味わかんねェ」
「ははは、気にすんな」
泡がついた手を綺麗に拭き、サンジを振り返った。そして、最高の笑顔を浮かべた。
「じゃあ、おやすみ!」
「あァ、おやすみ」
キッチンを出て、空を見上げた。そこには満点の星空がどこまでも広がっていた。
既にイビキが聞こえる男部屋で、フランキーに作ってもらったハンモックに潜り込んだ。明日の朝、早く起きてあの少年に会いに行こう。みんなが起きてしまう前に。