海賊長編1/非日常

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「サンジ!!」

息を切らしながら、勢い良くキッチンのドアを開けると、ダイニングテーブルに料理を並べているサンジと、眠そうに目を擦っているみんながいた。

「おいおい、朝っぱらから何騒いでんだよ。さっさと座れ」

「サンジ!!おれ、サンジのこと好きだ!!」

一瞬、時が止まったかの如く、キッチン内の動きが止まった。

「ええええ!!タクミ、サンジが好きだったのか!?!?」

一番最初に口を開いたのは、サンジではなく、チョッパーだった。

「チョッパー知らなかったのか?おれ様は最初っから気づいていたぜ!!」

「ウソップ、気づいてたのか!?すんげェ!!」

「あんた達ねぇ……」

「ふふふ、ストレートで素敵ね」

ゾロはニヤニヤと笑い、ブルックは景気よくバイオリンを弾きはじめた。フランキーは何故か泣いている。サンジは未だに動かない。ぽかん、としてマヌケな顔をしている。

「おーい、サンジー」

目の前でひらひらと手を振ると、サンジの意識が浮上したのがわかった。サンジはおれを見ると、手首を掴んで強い力でキッチンの外へと連れ出した。

「おいっ、サンジ…?」

甲板に下りると、ピタリと止まったサンジが振り返った。

「…みんなの前で、何言ってんだよ、」

「んー?事実だし!」

少し顔をしかめたサンジに苦笑した。

「望みないならフッていいよ。最初っから期待してないからさ!」

「……何最初から諦めてんだよ、」

「だって、サンジは女好きじゃん、」

サンジの優しさが苦しい。望みがないなら、お願いだからフッてくれよ。辛いから、

「…おれはレディが好きだ」

「…うん、」

「でも、お前とは付き合ってもいい、とか…」

「……え?」

機嫌悪そうに横を向いたサンジが、チラリとおれに視線を寄越した。それが、何だか照れ隠しにしか見えなくて。

「バカ、何顔赤くしてんだよ、」

「サンジだって赤いじゃん!てか、え、サンジはおれが好きなの…?」

「………悪ィかよ、」

足の先から頭の先まで何かが駆け上がる感覚が襲った。心臓がドキドキとうるさい。じゃあ、おれは、

「サンジ…!!」

「うおっ!」

ガバッと勢い良くサンジに飛びついた。そんなことでは、ぐらりともしないサンジの背中に手を回して力を込めた。

「……ったく……」

頭をぽん、と軽く叩かれて、胸に押し当てられた。サンジは、タクミの耳元に口を寄せた。

「………好きだ、」

耳元でボソリと囁かれた言葉に、胸が切なく痛くなった。

「おれも好きだよ!!」

どれくらい、そうしていたかは分からない。長かった気もするし、短かった気もする。おれはサンジからそっと離れると、ニッと笑った。

「おれ、ちょっと行かなきゃいけない所があるんだ、」

「は?」

まだ、終わってない。まだ、おれには、しなきゃいけない事がある。

「自称神サマのとこ!」

おれは、サンジにピースサインを見せると、サンジに背中を向けて走り出した。




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