ストロボ長編1/金盞花
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「安堂、準備長すぎ!」
「えー普通じゃない?和樹は何分くらいですんの?」
「10分。」
「早っ!!」
「普通だろ!」
長くて短い夏休みが終わってしまった。今日からまた学校で、朝早くから起きなきゃいけない生活が始まる。でも、夏休みが終わってくれてちょっとだけ嬉しかったりもする。
「それにしても、夏休みの宿題多過ぎじゃね?おれ、昨日死ぬ気で終わらせたし…」
あの量は先生たち、鬼畜だと思う。だって、分厚い問題集半分解いて来いとか…!!昨日必死でやったせいで、腕痛いし眠い。
「和樹終わらせたの!?俺、終わってないんだけど!」
「あと何が残ってんの?」
「あと、英語と数学」
「…って現国と古典しか終わってねェのか!」
「アハハ、いやー毎日遊んじゃってさー」
屈折のない笑顔を向けられ、胸がずしりと重くなるのを感じた。
「ったく、安堂はそればっかだなー」
苦笑混じりでチラリと隣を見ると、それがおれの使命だから!と胸を張っていた。
もう学校にはずいぶんの人が来ていた。久しぶりの再会だからか、校内がいつもより騒がしい気がする。
「みんなテンション高ェなァ」
「そーだね」
「会うの久しぶりだからなァ テンション上がんのわかる気するわ」
「確かに教室で騒ぎそうだよな、和樹」
「うっわっ!失礼だ!そのお前、ガキっぽいもんなみたいな目!!」
安堂の腕に軽くパンチをお見舞いしてやる。痛ぇーとあまり痛そうでない声を出している安堂がおもしろくて少し笑えた。
「あ、おはよー…う!??」
階段の角に差し掛かったとき、小さな女の子が少し違和感を感じる挨拶をしてきた。
「?おはよー えっと…おれのファンの子?」
「はよっす」
悔しいが安堂にはファンがたくさんいる。もちろん、蓮にも。(おれにだっているんだぞ!少しだけど!!)
目の前の女の子はおれ達には用はないようで安堂の記憶によれば夏休み前に駅前で蓮にフラれた子らしい。駅前で告るなんて、すっげえ勇気の持ち主だ。少しだけ尊敬した。そして、偶然を装っておはようを言うつもりだったらしい。つまり、おれ達が邪魔したって訳か。
「かっわいー!」
「あーあー安堂、茶化すな茶化すな なんか、ごめんね?」
すると女の子は走り去ってしまった。
「安堂が意地悪言うからー」
「それにしてもこんな無愛想な男のどこがいいのかねー?」
後ろからやってきた蓮に軽く挨拶しながら安堂は素直に疑問を口にした。おれは安堂の隣を歩くのが好きだ。というか、安堂が好きだ。どんな所が好きかと問われると困るが、とにかく好きだ。もちろん、恋愛感情であって、世間一般では認められない恋。不毛ってやつ。
教室に入ると、さっきの女の子の噂で持ち切りだった。(とくに女子)木下仁菜子ちゃんって名前らしい。
「それにしても、良く駅前みたいな人がたくさんいるところで告白なんてするよなー」
よくわからないなーと首を傾げながら安堂が呟いた。
「んだな、」
おれは好きな人に告白できるってことからすげェと思う。おれにはできねェ
「なァ今日学校終わんの早いから放課後遊びに行かね?」
「えーっと…今日は予定がないな…オッケー」
安堂と遊ぶのは本当に久しぶりで。おれは放課後をまだかまだかと待ち侘びていた。
―――…
「はい来たーこういうパターン」
せっかく遊べると思ったのに、委員会がありました。