海賊長編7/不良

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「ぐはっ…!」

バキ、と鈍い音がすると同時に赤くべとりとした血が飛び散った。

「野崎死ねぇぇえええ!!!!」

背後から雄叫びをあげながら飛び掛かってきた男の腹に蹴りを入れると、男は後ろにくの字になって飛んでいった。

残り少ない立っている奴らを一瞥し、片方だけ口角を上げた。

「…おら、掛かって来いよ」

挑発的に発した言葉に反応した何人かがおれに一斉に飛び掛かってきた。

何人だろうか四人ほどだろうか。右にアッパー、左にフック、背後には蹴り、斜め右後ろ回し蹴りを。どれも完璧に入り、全員地面に崩れ落ちた。

「十人以上いるくせに情けねェな」

おれは鼻で笑い、道端に投げた鞄を手に取ると、学校に向かった。


もう一限目が始まって30分は経過している。授業がどれだけ進んでろうがおれには全く関係ない。ただ、さっきまでやっていた喧嘩で出来た怪我が痛む。

せっかく治りかけていた傷口が開いてしまった。朝っぱらから喧嘩を吹っ掛けて来る迷惑な輩はどこに行ってもいるようだ。どこからおれがここに越してきたという噂を聞いたのかは知らないが、あいつらはおれの名前を知っていた。


派手な音をたててドアを開けて入るとクラスのいる奴らが驚いた顔でおれを見ていた。

「おい野崎、遅いぞ」

ヅラを被ってそうな不自然な髪型をした男の教師が教卓を数回叩きながら言ってきた。おれは教卓の前をわざと通り、教師を一瞥した。教師は怖じ気づいたが、それを見せまいて強がってみせた。それを嘲笑し、ゆっくりと自分の席に近づいた。

席に着くと、サンジが呆れたような視線をおれに向けた。おれはそれに気づいていないフリをして、机に突っ伏した。





「…、…い、おい起きろ」

いい音を出して叩(はた)かれた衝撃で目が覚めた。くそ、誰だ、おれの睡眠時間を削りやがったのは

「次の時間、体育だぞ」

睨みを効かせながら頭をあげるとそこには大嫌いなあいつが。

「チッ…テメェか」

「だから体育だって言ってんだろうが」

サンジはもう一度寝ようとしたおれの頭を再度叩いた。

「痛ェんだよ!」

「あ?そんなに強くは叩いてねェだろ」

叩かれた場所はきっと、喧嘩のときに切った場所だろう。ズキズキと痛んでいる。おれは渋々と立ち上がり、教室の出口に向かった。

「にしても、傷だらけだな…」

「…うっせェんだよ」

教室から出て右に曲がろうとすると、サンジに腕を捕まれた。

「…っ!…んだよ、」

ゴツゴツとして、それなのに綺麗な手に捕まれ、腕が熱くなった。

「サボんな、授業くらいきちんと出ろ」

更衣室があるのは教室から出て左向きに出なければいけない。つまりおれは今から屋上でサボろうと思っていたのだ。…くそ、いつもいつもサンジはおれの計画を壊しやがる

「…チッ …離せよ」

「授業は」

「…出りゃいいんだろ」

「分かればいい」と言ったサンジはスタスタと歩いて行ってしまう。後ろ姿は中学の頃とあまり変わっていなかった。背は伸びたんだろう、あの頃よりも背中が大きい。

おれはずしりと重くなった気持ちを振り払うようにサンジに聞こえるように大きく舌打ちをした。





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