海賊長編7/不良
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「日向、ほら」
おれは鞄の中からパンを取り出した日向に青い包みの弁当を差し出すと日向は一瞬目を見開いておれを見ると、すぐに顔をしかめた。
「…………頼んでねェ」
「…まぁ、ついでだついで」
朝、自分の弁当を作るときに前日の日向の昼食を思い出し、思わず二人分作ってしまった。どうせルフィ用にいつも多めに作っている。それをまた日向用に少し多めに作るだけだ。面倒なことは何一つない。
「………チッ、」
舌打ちしつつも、奪うように弁当箱を受け取る日向に思わず苦笑を零した。弁当箱を開けた日向はしばらく中身をじっと見ていたがふと顔を上げた。
「………んだよ、」
「いや?」
「…チッ、」
日向は何か言いたげに舌打ちし、箸を取り出すと恐る恐るといった様子でコロッケを口に運んだ。
「……!!」
もう一度目を見開くと、ガツガツと食べはじめた。これだけ美味そうに食ってもらえれば本望だ。作りがいがある。
「あ!!日向だけずりィ!!!」
口にたくさん頬張ったルフィが日向を指差して吠えた。
「お前だっておれの弁当食うだろうが」
「それとこれとはまた別だ!!」
「はァ?」
ルフィの物言いに驚き呆れていると、黙々と食べ進めていた日向がルフィをギロリも睨みつけた。
「……いいかルフィ、おれはあいつがコレを渡すから、゙仕方なく″食ってんだからな」
「じゃあおれがもらう!」
ルフィが日向に飛び掛かったが、日向はそれをひらりと躱(かわ)すと、ニヤリと笑ってルフィに向けて箸を向けた。
「残念だったな、おれからモノは奪えねェよ」
悔しがるのかとルフィを見ると、ルフィは目をキラキラとさせ、日向を見ていた。
「お前、強くなったのか!」
「まあ、少なくともそこら辺の奴よりかはな」
「今度、組み手しよう!!」
「はァ?なんでルフィと怠慢やんなきゃいけねェんだよ」
「タイマンじゃなくて組み手!」
「アンパンマンみたいな言い方すんな」
噛み合わない会話にナミさんもロビンちゃんもクスクスと笑っている。一方おれは、ルフィへの態度とおれへの態度が全く違うことに苛立ちを覚えていた。あの日までは1番仲が良くて、近かったはずなのに。
「…ルフィ、弁当いらねぇのか」
「いる!!」
ルフィにおれの弁当を見せると、飛び掛かるように飛んできた。ちらりと日向を見ると、日向もおれを見ていたようで目が合った。何故か心臓がドクン、と大袈裟に跳ねた。内心首を傾げると、日向も目が合って驚いたのか大きく舌打ちをして再度、弁当を食べる手を動かしはじめた。
「ナミさん、ロビンちゃん、デザートいるかい?」
何故かドクドクと速度を速めたままの心臓をごまかすようにレディ二人に微笑みかけ、余計なことを考えないように今日の夕食のレシピと明日の弁当とデザートのレシピを頭の中で広げた。